5話 苦労蛍、面倒事とは彼の為に有り ページ6
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「……あぁ、半年ぶりの横浜とはこうも暖かかったかな。」
ポートマフィアに所属する彼は、彼専用の部屋に着くと荷物を床に置き大きく伸びをした。
晴れ晴れとした表情で部屋を見渡すも、直ぐにその表情は曇り、目は死んだ魚のような目に成ってしまった。
「嗚呼、こんなに書類が……。一寸待って兄さんの分じゃないの此。あー、芥川さん亦物壊したのか、修理届け出して修理班に行って貰わないと……。」
「相変わらずの苦労人じゃのう、A。」
「姐さん。」
部屋について約一分後に山のような書類と格闘し始めた坂東に、突如、彼の育て親でもあり上司でもある、尾崎紅葉の声が掛けられた。
書類を片付ける手を止め、椅子を回し振り向くとキョロキョロと部屋を見回した後、尾崎は嘸済まなそうに眉尻を下げた。
「済まんの。私からも少々頼みがあってのぅ。出ていって仕舞った鏡花を連れ戻して欲しいのじゃ。」
「……鏡花ちゃん…ですか。解りました、早急に連れ戻して来ます。」
がたりと椅子から立ち上がり、自室から出ていった坂東の瞳は、嘸面倒臭そうな色に染まっていた。
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此処か、と辿り着いたのは近場の港。
鏡花が居るのはきっと、現在海の上を走る船の上だろう。
「さて、どうやって彼処まで行こうか…。」
腕を組、頭を捻らせていると突如背後から駆け足が聞こえ振り向くと眼鏡の背の高い男性が走って来ていた。
此は希望だと思った坂東は、その男性に声をかけようとしたが……、
「おい、其処の小僧邪魔だ!!」
とてつもなく恐ろしい形相で怒鳴られた。
たが坂東は諦めない。
「御兄さん。僕も彼処に用事があるのです。一緒に乗せてくれはしませんか。」
「はぁ?!お前のような小僧に構っている暇は……。」
「ポートマフィア…、そう云えば分かってくれるでしょう?幹部の不手際は僕が処理することに成ってるので。」
そう云うと、眼鏡の殿方は渋々と云った様子だったが乗せてくれた。
船に近づくに連れ、激しい衝突音や肉を突き刺す鈍い音が聞こえ始める。
若しや…、と思い目を凝らすと其処には黒い外套を羽織った短髪の黒髪少年の芥川龍之介と先日合った中島敦だった。
「……此の船の修繕書類も、全部僕が書くのかな。」
どうしてこうも、自分には面倒事はが振り掛かるのだろうか……。
坂東は深く溜め息を吐き、船に視線を戻した。
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6話 理想に焼かれ消えること無かれ、小蛍→←4話 蛙に泣く濡れ蛍、月に照され温もりを知る
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綾舞町 - 小夜さん» レスが遅れて申し訳御座いません!有難う御座います。ぼちぼち更新して行きますが、皆様に楽しんで貰えるような作品にしていきます。 (2016年2月28日 18時) (レス) id: 4a08da8a5b (このIDを非表示/違反報告)
小夜(プロフ) - 楽しく読ませていただいています。更新頑張ってください。 (2016年2月27日 21時) (レス) id: 7f5dee31f8 (このIDを非表示/違反報告)
綾舞町 - 吾嬬さん» 誠にありがたきお言葉、光栄です。皆様の期待にお応え出来るような物語を書き綴って行きたいと思います。応援、宜しくお願い致します。 (2016年2月15日 21時) (レス) id: 4a08da8a5b (このIDを非表示/違反報告)
吾嬬(プロフ) - 続きが愉しみです 、更新頑張ってください (2016年2月15日 21時) (レス) id: b2b5f854fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾舞町 | 作成日時:2016年2月15日 21時