こんなもの ページ11
＜東谷目線＞
昨日は、尾形が寝てしまい、月島軍曹の手伝いを強制的にされたので疲れて案内された空き部屋で直ぐに寝てしまった。今は朝の九時程度だろうか。
尾形上等兵の様子を見に行こうと病室まで行くと人集りがあり、踵を帰そうとした。だが、人集りで誰かも分からない奴が発した言葉で人波を掻い潜り、尾形の元へ急ぐ。
『どうだった?やっばり噂は本当だったか?』
『あぁ、尾形上等兵…まるで人が変わったように……何だか花沢少尉みたいだった』
『クソ尾形がクソ尾形じゃない…!?』
「尾形上等兵殿!?」
遂に私は人波を押し退け、話の中心、原因である尾形上等兵の元に辿り着く。
隣に対象的な黒子(ほくろ)軍人が居たが後だ。
「A殿!おはようございます」
「…最悪じゃんか……」
そこには勇作が憑依していた尾形上等兵が居た。
これは非常に面倒臭い。てか尾形上等兵の顔で悪意無しの純粋な笑顔で挨拶は駄目だ。違和感が凄い。尾形上等兵も、かなり整った顔立ちだ。人集りに居た一部男色の軍人がその場で悶えていた。
「これ本当に百之助なの?ちょっと気持ち悪いんだけど」
「取り合えず散った散った!上官命令だよ!」
パンパンと目立つように手を叩き、人集りに去れ、と言う黒子は、人集りざ無くなった頃
「確か東谷だったよね、月島軍曹から聞いてるよ」
と、私を認知していることを表し、その後説明を求められた。なので私は、憑依されていると語り、茅の外だった窓を開けて景色を眺める尾形上等兵を見た。本当に違和感が酷い。
「勇作殿〜?何故このような事になったのかお分かりぃ?」
「今は兄様の名前で呼んで下さい!あぁ!兄様の体ッ!兄様の声ッ!」
「これ程までに嬉しい事はありませんッ!」
もうやだ、やめたら?この仕事?
思わず近くにあった机を両手で叩こうとするが、寸での所でその衝動を抑える。今は抑えるのよ、東谷A!
因みに、近くにいた黒子は尾形(勇作)を見て唖然としていた。たぶん、今夢を見ているのか?等と現実を受け入れてないと思う。無理もない。
「浩平、あれがクソ尾形らしいぞ」
「嘘だろ洋平?まるでガキみてぇに笑ってるんだぞ?」
「二階堂ォ〜…言ったよねぇ、散れって」
扉に隠れ、此方を伺う双子…二階堂浩平・洋平が黒子に叱られている内に、私は勇作を強制的に尾形上等兵の体から出て貰う事にする。
なので尾形上等兵の方を振り返ると、そこには空いた窓と先程まで人が居た形跡があったベッドだけだった。
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作者名：文揚げ | 作成日時：2021年10月4日 17時
