脱出 42 ページ45
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緑「散策だった」
貴『えっ…』
緑間君は突然ポツリポツリと語り始めた。
まるで私の心を読んでいたかのように、聞きたかったことを教えてくれた。
緑間君達秀徳は3階散策中、化け物に遭遇し襲われていたそうだ。
まさか化け物が出るとは思ってもみなかったことだし、恐怖もあったと言う。
戦う術もなく逃げるしか出来ず、途中緑間君を庇っていた高尾君とはぐれてしまったそうだ。
緑「脳裏にあいつの逃げろって必死に伝える声が残っているのだよ…」
化け物ものからの攻撃を受け、負傷しながらも逃げ続けて手術室に身を潜めたと緑間君は言う。
緑「あの時俺が高尾を助けていたらっ…」
苦痛に歪める緑間君の顔を見ていると私が泣きそうになった。
貴『高尾君なら大丈夫だよ』
緑「お前に何がわかるのだよっ!」
信憑性のない言葉のせいで緑間君を怒らせてしまった。
突然の怒鳴り声にみんな一斉にこちらを見る。
貴『…緑間君が信じてあげなくて誰が高尾君達を信じるの?チームメイト…良き相棒なんじゃないの?』
緑「…」
それ以上緑間君は何も言わなくなった。
貴『…ごめんね』
一言言い残してその場を離れた。
なんとしてでも緑間君の代わりに私が高尾君と宮地さんを見つけて助ける。
黒「大丈夫ですか?」
一番に声を掛けてくれたのは黒子君だった。
他のみんなも心配そうに私を見ている。
貴『緑間君を怒らせてしまったの。私ってほんとなんの役にも立てないよね』
悲しさを紛らわすために笑ってみせるけど、自分でもわかるほどに上手く笑えてない。
黒「そんなことはありません。氷雨さんは十分に活躍してます」
ああ、こんな時だけど真に会いたいって思う。
真は優しい言葉を掛けてくれる訳じゃないけど、真の隣はいつも落ち着く。
貴『ありがとう黒子君』
私はポツリ呟き部屋の隅っこに身を寄せた。
そういえばまだ真からのメールを確認していなかった。
確認しようと思って携帯を開く。
そこにはいつもの日常的なメール内容が書かれてあった。
花(今から帰るからメシ作れ)
いつもなら軽口叩いて返信するけど、今はこのメールが私の心の支えになった。
なんだか懐かしく感じるメールだ。
貴『ま…こと…』
堪えていた涙が今になって出てくる。
帰りたい。
帰りたいよ、真…。
どうやったら真のところに帰れる?
頭のいい真ならわかる?
止まらない涙。
嗚咽する声を隠そうとしても無理そうだった。
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レイナ(プロフ) - 花宮落ちが良いなと思います。 勝手ですみません(´×ω×`) (2015年7月27日 4時) (レス) id: 88a6ecb96b (このIDを非表示/違反報告)
サイガ(プロフ) - 静狐さん» えっ!? (2015年7月3日 19時) (レス) id: 68af667ea3 (このIDを非表示/違反報告)
静狐 - 今吉さんです! (2015年7月3日 16時) (レス) id: c3c93e9f8b (このIDを非表示/違反報告)
サイガ(プロフ) - 秋狸さん» ありがとうございます!頑張って更新しますね! (2015年2月16日 17時) (レス) id: 68af667ea3 (このIDを非表示/違反報告)
秋狸 - サイガさんの脱出シリーズ待ってました!怖いけど楽しく読んでます!これからも頑張ってください! (2015年2月16日 16時) (レス) id: b6fc68a439 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サイガ | 作成日時:2014年3月11日 13時