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ホップの苦みを喉に流し込みながら、すり寄ってくるもずくを撫でる。ラフはAの膝の上に。
テーブルに肘をついて、ビールを煽り続けるAを見つめる。
「すげーカッコ良かったよ、ソロ。でも、そろそろ酒やめとけよ」
「じゃあ宗もそれで終わりね」
「はいはい。あ、足元の紙袋見てみ」
いわゆるプレゼント。露骨だと思われてるだろうなあ。仕方ない。プレゼントひとつするのに喧嘩までするような回りくどい夫婦みたいにはいかない。
「俺からのプレゼント。ご随意にどうぞ」
紙袋の中身は、封筒と赤いガーベラと、黒い箱。
「……ピアス?」
箱から開けたらしいAが反応する。クロムハーツを買うのはちょっと度胸が必要だったけど、ネックレスとかリングよりは落ち着いた値段で安心した。
「うん、そう。貸して、付けるよ」
右耳のホールにそっと手を伸ばして、少し重いそれを付ける。全部合わせたら相当な重量になりそうだけど、大丈夫かな。
「ん、似合う。他も開けてみて」
封筒の中に入れたのはクロムハーツのハウスカードと、公的提出書類。いや、記入してもらえるかはわからないけど。相当にヘタレなプロポーズだと我ながら思うけど。
「……ペンある?」
「うわ」
「うわって何。っていうか、ムードもクソもないよね。下手くそ」
「今言わなきゃ一生チャンス逃すのに、ムード作ってあからさまにプロポーズしたら、先延ばしにするでしょ」
「まあ、たしかに。これでいいんだっけ」
「うん、そう。捺印忘れないでね」
手早く記入してもらって、ムードもクソもないプロポーズは成功した。でも、ほんとにAはエンゲージリングじゃなくてピアスでいいんだろうか。
「これで、ほんとに幸せ?」
「幸せだよ。好きなことしてるんだから」
それなら、よかったなんて言葉を喉の奥に押し込んで、長い髪を撫でた。
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らいむ@ - すごく好きです!更新楽しみにしてます! (2019年3月6日 16時) (レス) id: 6a02a5c532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:硝子体 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/glass/
作成日時:2019年1月7日 0時