オペ室 ページ22
和サイド
「よろしくお願いします。」
清「よろしくお願いします。」
麻酔が効いて眠っているA。
「ガーゼと生食。」
術野を確保してもう一度ちゃんと状態を把握する。
「子宮全摘したんだなぁ。なんでだろう。」
清「私の3歳上なので34歳ですよね。ほかに方法なかったんですかね。」
「卵巣は両方とも残ってる。見た感じなんの問題もなさそう。いたって正常な卵巣だよ。大きさも触った感じも。ガーゼもうちょっとちょうだい。」
的確に手に必要なものが渡される。
清「東京で手術してすぐに島に戻ってきたってことは納得できてなかったんじゃないでしょうか。」
「どういうこと？3−0バイクリルと持針器ちょうだい。」
念のため緩んでる縫合をやり直しておく。じわじわ出血してきたら怖いからね。
清「決意して前向きな気持ちで手術受けたのなら、ちゃんと入院して傷を治して体力が戻ってから退院すると思うんです。でもこんな状態で退院してしかも島まで戻ってきたんですよ。故郷に帰りたくなる時って心弱ってるときだったと思いません？」
俺も清水さんも学生時代だけだとは言え島から離れていた時期があった。
確かに辛い時期によく島のこと思い出しったっけ。
「そうだね。そうだったよ。確かに決意して手術に臨んだとしても、急に現実受け止められないだろうし気持ちだって切り替えられないだろうね。」
清「経過はどうやって見るんですか？」
「そこが悩みどころ。はさみちょうだい。」
パチンと手のひらが鳴る。
清「しばらくは診療所ですよね？」
「1週間は様子見たいかな。その間に東京での主治医とコンタクト取れたら良いけど。この手術で完治なのかこの先にも何か治療計画があるのかもわからない。なんせなんで子宮全摘したのかすらわからないからね。この年齢で未婚の患者さんが受ける手術としてはよっぽどの理由があったんだと思う。」
清「そうですよね。卵巣が残っているから代理母出産は可能ですけど現実的に考えると難しいだろうし。」
「よし。これできれいになったかな。じゃお腹閉じようか。4−0ナイロンちょうだい。」
一度閉じかけてたところを再度縫合するとなると傷がどうしても残りやすくなってしまうので
なるべく緩めに自然に皮膚が閉じるように縫い合わせる。
清「先生の縫合本当にきれいですよね。傷残らないと良いですね。」
「どれだけ引っ張るかがポイントなんだけどなかなか難しいよ。」
一針一針丁寧に心をこめて。
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作者名：ルパン
| 作成日時：2019年8月28日 20時
