愛は故郷にありました。 (ページ18)

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診療所ページ18

Aサイド

和くんにだけはばれたくなかったのに。
島の誰にも知られたくなかったのに。
この世の誰にも知られたくなかったから15年以上も住んだ東京離れて戻ってきたのに。

診療所に向かう車の中の空気は重い。
後部座席で横になりこれからどうなるのだろうと考える。

和「大丈夫？痛みは少しはましになってる？診療所についたらもうちょっと強い痛み止め入れてあげるからね、それまで頑張ってよ。」

聞きたいこといっぱいあるだろうにそれでも私の気持ちを考えて優しくしてくれる。

「大丈夫。」

これ以上心配かけたらいけないと思いかすれ声だけど頑張って伝えた。

和「本当によくそれだけの痛みに数日間耐えてたね。痛み止めは飲んでたの？」

「うん。」

声に出したつもりだったけど聞こえていなかったのか和くんが後ろを振り向いて同じことを聞いてきたのでうなづいた。

和「だよね、じゃないと怪物でもない限り歩いたりできるわけないよ。」

そんな大げさなことなのかなと思いながらも痛みがかなり強烈だったのは確か。

和「診療所についたよ。歩けそう？車椅子もってきたほうが良さそう？」

返事を迷っていると診療所から車椅子を押して私服姿のゆみちゃんが急いでこちらに駆けてくる。

ゆ「先生、待ってました。患者さん大丈夫ですか？」

車の中が暗いから誰かわかってないみたい。

和「うん、命に別状はないんだけど結構緊急性が高いのでとりあえず傷の状態ちゃんと診てからどうするか考える。下腹部に横切開20センチくらいかな。」

ゆ「わかりました。準備できています。」

この診療所を和くんと二人で守ってるんだろうな。
しっかりした頼りになりそうな感じが声からでもわかる。

車のドアが開かれて私の顔を見たゆみちゃん。
驚くかなと思ったけれど、ナースの顔になっているゆみちゃんは優しい笑顔を向けてくる。

ゆ「もう大丈夫ですからね。ゆっくり起き上がって車椅子で中まで行きましょう。慌てなくて良いですよー。」

身体の的確な場所を支えてくれるのですんなに体を起こすことができた。

「ゆみちゃん、ナースになったんだね。」

ゆ「そうなんです。島のこと大好きだから、生まれも育ちも田舎でのんびりしてます。立ち上がる時お腹に響きますよーゆっくり腰下ろして下さいね。」

「ありがとう。」

車椅子に無事乗ることができた。
和くんは先に診療所の中へ行ったみたい。

ゆ「和先生、とーっても腕の良い先生だから安心して任せて大丈夫ですよ。」