愛は故郷にありました。 (ページ2)

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故郷への道のりページ2

Aサイド

4時間以上も座りっぱなしだとさすがにお尻痛いな。

もうすぐ降りる駅だとアナウンスがあり立ち上がり準備をする。

まだまだ傷口は痛くて腰をまっすぐに伸ばすことさえ難しい。
スーツケース、こんなに重かったっけ。それほど体力を奪われているのかな。

ここからまだ乗り換えて1時間。そこからフェリーに乗ってやっと故郷。

ホームの少しの段差でもスーツケースをなかなか持ち上げられなくて苦労する。

おかげで乗る予定をしていた電車に乗り遅れてしまった。
次の電車まで45分。

歩きまわる体力もないし、どうしようかなととりあえずベンチに腰掛ける。

ふと我に返る。島に戻って私どうするつもりなんだろう。

両親もいない。友達もほとんど島を出てしまって島民は高齢者ばかりだろうか。
帰ると目立つのかな。あれこれ噂されるだろうか。

そもそもどうやって生計を立てるのか。

急に決断を下したわけでは決してないはずなのに改めて現実となると不安が襲ってくる。

東京に出たのが18歳の時。
父と母に見送られフェリーに乗り込み夢と希望に満ちていた。
未来はただただキラキラまぶしかった。

大学生活はそれなりに楽しかった。気の合う友達もできたし彼氏もできたし。
いわゆる女子大生として普通の学生生活を送っていた。バイトもしたし友達と旅行だってした。

卒業後も内定をもらった会社で地味ではあるけれど堅実に営業の補佐として事務の仕事を10年続けた。同じ部署の営業担当の2年先輩と順調に付き合っていた。

と思っていたのに。

人生ってうまくいかないんだね。
思っていたようにはなかなかいかないのが人生なのかも。

目の前にある白いスーツケースを見つめながら私の東京での15年がこのスーツケース一つに詰まってるのかと思うとなんだか悲しくむなしくなってきた。

のどが渇いた。立ち上がり売店までそろりそろり歩く。
傷口が痛むから体を折り曲げるんだけどそうすると腰が痛くて痛くて。

松本先生が頓服用にって処方してくれた鎮痛剤、どこにしまっただろうか。
頭もぼーっとして思い出せない。

麦茶のボトルを手にとりふと晩御飯のことを考える。
夜どうしようか。買い物にでかける体力はないし島にはデリバリーのような便利なシステムはない。
一晩くらい食べなくても、と思うけど、明日だって買い物に行く体力はないだろう。

あれこれ考えるとどうでもよくなって目の前にあるバウムクーヘンを手に取り麦茶とともに差し出す。