第195話「中原中也という男」夢主 ページ4
私は一度深呼吸をして、目を閉じた。
それから、ゆっくりと目を開けると、命の灯が消えゆこうとしている中也さんの姿が目に入る。
「……構わない。女王の加護を、中也さんに。」
「でも、そうしたらだざいが……！！」
「……太宰さんは、私が護ってみせるよ。自分の力を過信してる訳じゃあないけど……“勝たなくていい”戦いは、得意だから。」
私は、拳をぐっと握って、口角を上げて見せる。
「……うまく、わらえてないわよ、いろは。」
女王はそう云うと、祈りを捧げる様に中也さんの方向に向きなおす。
其れから数秒の間目を瞑った後、私の方を見詰めると「なかはらに、かごがあたえられたわ。」と、真剣な表情で云った。
「……有難う、女王。」
私は、女王に対して微笑んでみせた。
すると、女王は少し不安げな表情になる。
……ずっと、私を見てきたからだろう。
何度も太宰さんを失いそうになって、その度に壊れて、暴走してきた私を知っているからだろう。
でも、失えば私が私で居られなくなる存在なのは、何も太宰さんだけでは無いのだ。
中也さんだって同じである。
太宰さんの性格や異能、趣味の影響により、確かに圧倒的に(と云うか、中也さんが圧倒的強さを持っていると云う事も大いにあるのだろうが)命の危機に瀕することは、太宰さんの方が多く、女王の中では「中也さんは其処までではない」という見解になっていたのかもしれない。
「……いろはぁ！！奴の再生を阻止することは出来るかぁい？！」
その時、半分叫ぶように、太宰さんは私にそう云う。
私は迷わず、笑って答える。
「……はい！！勿論です！！」
私は女王をこの身に宿す者。
私は心も強くあらねばならない。
せめて、今は弱くても強くなれるように、私は優しく、強く、笑う。
「……それでこそ、わたくしがみこんだいろはよ。いいわ！てつだってあげてもよくってよ！」
女王はそう云うと、愉し気に笑っていた。
第196話「女王、レジーナ」夢主→←第194話「女王の加護」夢主
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作者名：業猫 | 作成日時：2020年1月6日 15時
