第167話「侵略者」アグラソル ページ25
薄暗い路地を、歩いていた。
よく知った場所、嗅ぎ慣れた匂い。
僕は侵略者。
静かにこの街に、国に侵略する。
「……やぁ、久々だね。元気だったかい?
「……マークか。久々だね。君こそ元気そうで何よりだよ。」
僕の目の前で、朗らかに笑うはマーク・トウェイン。
云うまでも無いが……組合の構成員の一人である。
……そして
「で?今回の報告書は?僕だけじゃあない……組合員なら、誰でも君の実力は知ってるし期待してるんだぜ___組合始まって以来の最良組合員、リオ?」
___僕も、組合の一員である。
僕の名はアグラソル。
あの日、この街の調査の方向性に迷っていた僕を拾ったいろはに付けられた名だ。
……そして、真の名を、リオ・コッパード。
其れが僕……
「何時もの様に、この封筒の中に入っているよ、マーク。心配せずとも、僕は君たち組合を裏切らないさ。……最も、組合は僕を切り捨てようとしていたみたいだけど。」
「モンゴメリの件か……。あの件は済まなかったってさ。伝言だよ。……嗚呼、リオ!そう怒るな、我が友よ!こう考えよう。組合は、君がモンゴメリに敗けないと‟信じていた”。だから、わざと伝えなかった。……如何かな、リオ。こう考えれば最高の信頼関係になるじゃないか!」
「そうだね……。僕からすれば、申し分ない。只、それは組合の目的と矛盾するし、何よりあの新人さん……ルーシー・モード・モンゴメリだったかな?彼女を最初から捨て駒として扱っていたことになる。」
僕は、そう云うと手に持っていた茶封筒をマークの胸元に押し付けた。
報告書と共に怒りも込めて。
「嗚呼、組合は正義の組織じゃあないさ。それは僕も知っているとも。けれど……彼女は、かなりの実力の持ち主だった。そんな彼女の実力を見誤ったのなら、組合は僕が所属する組織として相応しくないな。……武装探偵社の方がもっと
「……そうだね。でも、あれが最適だったんだろう。彼が選んだんだから。」
そう云ったマークを横目に、僕は今さっき通って来たばかりの道を歩いていく。
僕は、飽く迄在籍期間が長いだけの一構成員に過ぎない。
作戦参謀のオルコットさんや、組合長のフィッツジェラルドさんに意見出来る身分では無い。
故に、僕は言葉を飲んだ。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年9月9日 16時