第106話「助言」アグラソル ページ13
何の気まぐれか、敦さんに助言と叱咤激励をする森さんを、僕は一歩後ろから見ていた。
「お話は終わり?やる気は戻ったかしら。そうでなくっちゃ面白くないわ。…でも、終わりよ。」
「「!」」
その、言葉通りだった。
敦さんの足元にはアンが浮上してきている。
それに気づいた敦さんは咄嗟に真上に飛び上がるが………頭上にも、アンが居た。
「もう一体!?」
「そちらは二人なのだから当然でしょ?」
「しまっ………!」
「敦さん!」
何とかアンから逃げようとするが、呆気なく敦さんは捕まってしまった。
そして、谷崎さんの時と同じ様に閉ざされていた部屋から無数の手が出てきて敦さんを部屋の奥に連れ込もうとした、その瞬間……敦さんと、目が合う。
…これは余談だが、僕の異能は姿を変えた相手の異能が使えるという異能だ。
つまり、異能の同時発動は出来ない__まぁ一応抜け道は有るのだが今回はどちらにせよ無理だ__が。
発動型__つまりいろはや敦さんのような意図して発動する異能のことだが__ではない…常時発動型の異能__例えば太宰さんの様な__は、一度その人物になると暫く…正確には一週間ほど、僕とその異能の相性が良ければ、効果が残る場合がある。
…最近、いろはを回収する為に変身していたあの青年。
彼の異能は、目の合った相手が伝えようとしている事を知る異能だった。
「………成、程……!」
僕は口の両端を上げ…いろはの異能を、発動する。
相性が悪いので正直賭けだが…ドアの枠の間、つまりに閉まった時に本来ドアが収まる場所に異能を展開する。
“護るべきもの”は…敦さんで十分だろう。いろは程ではないにしてもその次か、そのまた次位には大切な存在だ。
「はい、おしまーい★…それで、おじさまはどうするの?」
何も知らぬ赤毛の少女…モンゴメリは、無邪気に森さんに笑いかけていた。
第107話「危機」夢主→←第105話「此処に居る資格」中島敦
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:業猫 | 作成日時:2019年7月10日 12時