第54話「対ソル戦」夢主 ページ5
「……私の、回収?」
私が警戒したまま聞き返すと、ソルは頷く。
「嗚呼、君の異能は強力で“使える”。使い捨てるには惜しい……って云う芥川さんからの命でね。……大人しくしてもらうよ。」
「……私が抵抗しないとでも?」
「ふむ、心外だなぁ。悪い話じゃ無いと思うんだけど。君の命は助かるんだから。」
「……ふざけないで。私は探偵社の一員なの。自分だけが助かる道で満足出来るわけが無いでしょう!」
私が怒りに震えながら、そう噛みつくとソルは愉しそうに笑う。
まるで愚かな者でも見ているかのように、愉し気に。
「変わったねぇ、いろは。まるで数年前までとは別人だ。前の君が今の君を見たら驚くだろうね?」
「……私は何も変わっていない。今も昔も、太宰さんの為に全てを捧げるのみ……!」
挑発してくるソルに、私は鋭い視線で返す。
最も、殺気などは含んでいないお粗末なものだが。
「その“太宰さん”は裏切者の罪で地下牢に捕らえられているけれど?」
「……へぇ、情報をどうも、ソル。……じゃあお礼に捕えて軍警に引き渡すとしましょうか?」
「そんなことも知らされていないとは!君も落ちぶれたねぇ、かつては次期幹部候補とまで言われていたのに!……それは嬉しいね、全力で拒否させて貰おう。」
私は疑似的な女王を消し去り……異能を普段の様に、体に沿って展開する。
こうすることで身体能力を強化出来るのだ。
一方、ソルはというと……太宰さんの姿になっていた。
「“いろは、私を傷つけないでおくれよ”?」
「……ッ!!趣味が悪くて安心するよ、ソル。太宰さんになるなんて……。」
私は無理矢理笑いながら、仕込みのナイフを取り出し振りかぶった。
が、涼しい顔でソルは避ける。
そして、ニッコリと笑いながら私のお腹に、
私は何とか受け身を取るが、不完全だったが為にかなりのダメージを食らう。
「うっ……!」
「……へぇ、反応はよくなってるじゃないか。安心したよ。」
「私は……強欲だからねぇ!」
私はナイフを振って、続けて流れる様に蹴りを入れる。
「っ!!」
私は苦痛に顔を歪めるソルに、続けて
「……油断したね。君の異能は強力だが……君自身はまだまだ弱い。自覚すべきだ。……眠ってなよ、いろは。」
優しい声でそう云うソルを、私は睨みながら……気を失ったのだった。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時