第71話「戦闘準備」夢主 ページ24
「……いろは、一度気分転換に散歩でも行かないかい?」
ずっと静かに後ろで私を見守っていたソルは、心配げに、ずっと真顔で芥川さんを見つめて居た私にそっと声をかける。
「……そうだね、私が居たって……何も出来ない。私は所詮……死にさえ、見捨てられた存在なのだから。」
「……いろは、いけないよ。そういう言葉は、心を殺していく。……それを僕に教えたのは君だろう。どうして……そう、自虐するんだい?過度な謙虚さは嫌いなんだろう、いろは?」
「……ごめん、いつもは頑張って……気を付けてるんだけど……心が弱ってると、どうしても嫌いな私になっていっちゃって……。……いけない、こんなの芥川さんに聞かれたら見損なわれちゃう。それだけは、絶対に厭。」
私はそう自分に言い聞かせて、椅子から立ち上がる。
「……行こうか、ソル。」
「嗚呼。既に最小限だが芥川さんの警護の為の人員も配置している。」
「流石ソル。準備に抜かりなくって安心できる。」
私は何とか笑って、そう云いながら部屋から出て、建物の中を散歩していたのだが……私はこの時、芥川さんの傍から離れたことを、後悔する。
何故なら、戻ってきたとき……部屋の前で出迎えたのは、失神している部下たちだったのだ。
「……!」
「……ソル、直ぐに首領に報告を。芥川さんが……攫われた。一葉ちゃんには直接お願い。私は居場所と犯人の特定をする。」
「……嗚呼、任せてくれ、いろは。」
私は顔を青くしながら……それでも冷静に、そう指示したのだった。
私が居れば、絶対にこんな事には。
私がもっと……太宰さんの様に、推理なんかが得意だったなら。
こんな失敗など、しなかったのだろうか。
「……悔しい。絶対に……場所は割り出す。取り返す。」
私はそう心に決めると……色んな部署へと、命令を出していく。
私がマフィアに残る条件の一つは……どの部署へも命令を下せる、実際のところ、首領と同じ権力だった。
森さんは少々渋ったが……承諾した。
よって、今のマフィアは、既に手中に有るといっても過言ではないレベルなのだ。
マフィアから抜けるのは……少し、先延ばしにしようか。
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年6月13日 11時