第32話「山際さん」中島敦 ページ33
「遅いぞ、探偵社!」
「す、すみません!ほらぁ!乱歩さんが手間取ったせいで刑事さん怒ってる!」
「ん、きみ誰?安井さんは?」
「無視!?無視なのこの人!酷くない!?」
いろはちゃんが涙目で僕に訴えてきて、僕は苦笑いで返す。
苦手だと公言している乱歩さんと一緒だからだろうか。
いろはちゃんが普段よりだいぶ騒がしい。
「俺は箕浦。安井の後任だ。本件はうちの課が仕切る。貴様ら探偵社は不要だ。」
「莫迦だなぁ。この世の難事件は須く、名探偵の仕切りに決まってるだろう?」
「ひぃいい!ごめんなさい!」
乱歩さんのその言葉に、僕がぎょっとするのとほぼ同時に、いろはちゃんは涙目で、僕の背中に隠れたまま周りの人たちに対して「ごめんなさい」を連呼し出した。
「フン。抹香臭い探偵社など、頼るものか。」
「何で。」
「殺されたのが__俺の、部下だからだ。」
「…え?」
涙目で回りの軍警の方達に謝っていたいろはちゃんは、被害者の顔を見るなり、固まる。
「山際、さん……?」
「……知ってるの?」
「うん……。乱歩さんのお供で来た時、優しくしてくれてた人なの。でも……」
他人の空似、だよね……?と、彼女は小さく震える。
そう云ういろはちゃんが普段よりうんと小さく見えて、勇気づけてあげたくて、僕は自然と彼女の手を取っていた。
「今朝、川を流れている所を発見されました。」
「…………ご婦人か。」
「胸部を銃で三発。それ以外は不明だ。殺害現場も時刻も、弾丸すら貫通しているため、発見出来ていない。」
「で、犯人は?」
「判らん。職場での様子を見る限り、特定の交際相手もいないようだ。」
……その答えに、乱歩さんは莫迦にした様に笑って云う。
「……それ、何も判ってない……って云わない?」
そう云った乱歩さんに、刑事さんはむっとした顔になる。
いろはちゃんはと云うと……放心状態のまま“何か”を探していた。
「(…僕じゃ、足りないんだ)」
何かを探す彼女を見た僕は、そう思った。
……と、其処まで考えて僕は疑問を抱く。
「何で、そんな風に思ったんだ?」と。
そんな事を考え出す僕を、乱歩さんは片目で見て、全て“視えた”様に、面白そうに笑っていた。
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業猫(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます……修正しますので少々お待ちください;; (2020年6月4日 23時) (レス) id: 3f4322bc19 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ(プロフ) - 名字を設定しても、(名字)のままなんですけど.... (2020年6月4日 23時) (レス) id: 63ee3bf45b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:業猫 | 作成日時:2019年5月20日 18時