【文豪ストレイドッグス】もういちど。【中島敦】

第18話「月下獣(後編)」夢主 ページ19

「おい太宰！いろは！」
「あぁ、遅かったね。虎は捕まえたよ。」

太宰さんは、倒れている敦くんを、笑いながら指さした。

「！その小僧……。じゃあそいつが？」
「うん、虎の能力者だ。変身している間の記憶が無かったんだね。」
「全く＿＿次から事前に説明しろ。肝が冷えたぞ。おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ。」

そう言った国木田さんの後ろに居たのは＿＿

「何だい、怪我人はなしかい？つまんないねェ。」

と、本人の言葉通りつまらなそうに言う、与謝野姉さま。

「はっはっは！中々できるようになったじゃないか、太宰。まぁ僕には及ばないけどね！」

と、心無しか楽しそうに笑う、乱歩さん。

「でも、そのヒトどうするんです？自覚はなかったわけでしょ？」

と、唯一まともなことを言っているのは賢治くん。

「どうする、太宰？一応区の災害指定猛獣だぞ」

国木田さん達の、ごもっともな疑問に、太宰さんは妖美に微笑みながら答えた。

「うふふ。実はもう決めてある」

チラリと敦くんを見る太宰さんに、私はふと嫌な予感がする。

「うちの社員にする」
「嫌ですよ、私こればっかりは何が何でも守ります……って、え？」

「はぁぁぁああああ!?」

廃屋に、国木田さんの叫びが響く。









＿これが事の始まり＿＿。
怪奇ひしめくこの町で、変人ぞろいの探偵社でこれより始まる怪奇譚。

これが先触れ、前兆し……＿＿

「もういちど……厭、今度こそ私が護ってみせるから。」

私は、未だ眠りこけている敦くんの頭をなでながら、そう……呟いた。

第19話「夢の中にて。」中島敦/夢主→←第17話「月下獣(前編)」夢主

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