はやくここまで ページ4
「……またか。」
朝起きて、準備を済ませる。ルーティンをこなしてから
探偵社に向かおうとして玄関を出てすぐのこと。
「あの人、暇なのかな」
足元に置かれている物の数々に
朝から頭を抱えたくなる。
花束に高級なお菓子。
アクセサリーに服に、あ、このイヤリング可愛い
……っと失礼。まあ値段を想像したくもない贈り物が
そこにあった。
極めつけにお洒落なメッセージカードに男物の香水の香り
「愛してる、ねぇ」
外の国の言語で書かれた甘ったるい言葉。
この人は本当にこんな性格だったかと疑いたく成るほど。
どら焼きにチョコソースというアンバランスさすら感じる
その人の想いにどうこたえればいいか未だにわからない
「__喜んでいただけましたか?」
「僕と貴方は敵対してるはずですよ。
……ドストエフスキーさん」
あとおはようございますと云うと律義に返す。
それも”私”の知ってる笑みではなく気持ちが前に出たような、
紫色の目に滲み出る熱に目をそらした
「それでも僕は想い続けますよ。
貴方が振り向いてくれるまで、何時までも」
「よく、わかりません。
僕は貴方にとって道標でしかないはずです」
目を合わせたら、落ちてはいけない何かに
足が滑りそうで自分の足元を見続ける。
正直声も聴きたくないのが事実だし、今すぐに
探偵社に駆け込みたい。
「___確かに僕にとって異能力を無くすのは
命に代えてもやらなければならないことです。」
それでも、と彼は続けてから
ふと僕の視界が何かで埋まった。
ふわりと鼻を擽る香りに今朝のメッセージカードと
同じ香りがして、そこではじめて抱きしめられたと理解した。
僕はこの人を捕まえなければいけない立場のはず。
それを理解しているのに何故こんなにも顔に熱が集まるのか。
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作者名:露西亜帽 | 作成日時:2018年6月4日 23時