第十三訓 ページ14
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翌日 新選組局長部屋にて―――
「トシ、伊東先生から聞いたぞ。災難だったな、体のほうは大丈夫か」
「…」
「トシ、俺たちは武士なんぞと名乗っちゃいるがただの芋の集まりにすぎん。そんな俺たちが死地において武士よりもなお武士らしく己を奮い立たせられるのは、お前が生み出した厳しい掟…局中法度の存在のおかげにほかならん。45か条からなる日常の細かい所作から礼儀、戦までの覚悟を説き厳しく律する法度。これを一つでも犯せば即切腹…そこにはお前の理想とする侍像が詰まっている。
俺たちは皆それに賛同した。…わかるかトシ、お前は奴らにとって理想の武士の現身だ。皆お前を手本としている、皆お前を見ている。俺は言えた義理じゃねェが士道に背くような真似はしてくれるなよ」
土方は煙草に火をつけ、ふう…と一息つく。
「…大した野郎だ。あっという間に広まっちまたよ、俺の醜態…。ま、野郎にとっては俺を蹴落としてのし上がる絶好の好機だからな」
「トシ、そんな言い方はやめろ。伊東先生は隊内の士気を思って…」
「先生と呼ぶのは辞めろと言ったはずだ。…近藤さん、アンタ局長の座を奴に譲るつもりか?
そうじゃなけりゃアンタとあいつ、二人で新選組の頭やるって腹なのかね。隊士の連中があいつの扱いに戸惑っているのを知らぬわけじゃあるまい。ともに入隊してきた同門の者の他数名が奴に与しているほどだ」
「伊東先生が新選組を乗っ取るつもりだとでも…?」
「さあな。だが奴が異例の出世を遂げる以前からアンタと同等、それ以上のふるまいをしているの確かだよ。奴ァ今の自分に増長している訳でもなく満足している訳でもねえ…」
土方は吸っていた煙草を灰皿に押し付け火を消す。
まだ二人の話は決着がつきそうにない。
「…近藤さん、アンタ何もわかっちゃいねェ。綺麗ごとだけじゃ組織は動かね―――ッ!!」
最後まで言いかけて何かに気づく土方、部屋の障子を蹴りどこかに走っていく。
「トシィ?!?!」
そこはテレビの置いてある一室。土方リモコンに手を伸ばしテレビをつける。
映ったテレビには金色の髪を高い位置でツインテールにしている可愛らしい少女が見える。
《 美少女侍トモエ5000!見参!! 》
「しまったーー!!もう始まってるウウウウウ!!録画予約すんの忘れてたトモエちゃアアアん!!___ッ!!」
(また、体が勝手に…なんつーもん見てるんだ俺は!)
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作者名:あ | 作成日時:2024年3月6日 2時