第十訓 ページ11
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「いい刀だな。じいさん、俺のが直るまでこいつを使わせてくれ」
「そいつはだめだ」
その言葉に土方はなぜ、と亭主に顔を向ける。
「そいつはちょっといわくつきの刀でな」
「何だよ音楽聞けたりコロコロがついたりすんのか」
「恐ろしく斬れることには違いねえ…だが、呪われとる。」
「呪い?冗談はよせよ」
「並の使い手じゃあ逆に刀に魂を喰われちまうじゃろうて…おめーさんじゃ使いこなせまい。
少し昔話に付き合ってもらえるか、その妖刀にまつわる悲しき輪廻の物語を…」
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土方side
…聞かなかった。じじいの話は総じて長い。
俺にはそんなことに付き合ってる暇はない、値が張ろうが張るまいが音楽が聴けようが聴けまいが…妖刀だろうが何だろうが俺にゃ関係ない。
「ん?」
目を上げると大勢の浪士がみちをふさいでいる。
「新選組副長、土方十四郎殿とお見受けする。侍でありながら天人に迎合し甘い汁をすする売国奴が!我ら攘夷の先兵が天誅を下さん!」
さっそく試し斬りの機会だ。
見せてもらおう、妖刀の斬れ味ッ…!!
「行くぜェええ!!!」
刀に手をかけ足に力をかける、そして
「すいませえええええん!!!!」
…俺は土下座をしていた。
え、あれ…なんだこれ。何やってんだ俺…!!体が勝手に!!口が、勝手に!!!
「すいませええん!!命だけは、命だけは勘弁してください!!!草履の裏でもなんでも舐めますんでェえええ!!!!!」
俺の言葉を聞いた攘夷浪士どもは一斉に笑い始める。指まで指してやがる…。
「誰だこのヘタレは!!」
「あの土方十四郎が!あの鬼の副長と恐れられる男が何たる様だ!!!」
「「だははははは!!!」」
どどどどういうことだ…!!!体が全く言うことを聞かねェッ……!!!
ふと、鍛冶屋のじじいの言葉が脳裏に浮かぶ。
《 並の使い手じゃあ逆に刀に魂を喰われちまうじゃろうて… 》
ハッ!まさか、コイツ…!!
俺は腰にぶら下げたあの妖刀に目を向ける。
妖刀の呪いで俺はこんなになっちまってるのか…!んなバカな話が!!!
「ぐっ!」
浪士に頭を踏みつけられ地面に伏せてしまう。
何度も何度も踏みつけられ頭にきている俺はそいつの足を掴み、
「てめェ…」
妖刀だかなんだか知らねえが俺が…このくらいでェ…!!
「あの、これくらいでほんと…勘弁して下さい…!」
財布を浪士たちの前に出していた…。
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作者名:あ | 作成日時:2024年3月6日 2時