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「さっきの話を聞いて思ったの。軸が混ざり合ったって言ってたけど…それは、あなたがこの世界を弄って、私の戸籍を作って、辻褄を合わせたことがきっかけなんじゃないかって」
なんで、私のためにそこまでするの？
「…なんでって、ただの気まぐれ」
ゴーストの声色がすとんと落ちた。
真面目に答える気なんてないと告げているようだった。
「こういうのって、よくあることなの」
「ああ、トリップ？ほぼないよ。パラレルワールドに飛ぶこと自体かなり低い確率なんだ、次元すら違う世界に飛ばされるなんて奇跡に近い」
「そう、なの。…弟が、…完全に死んだってなんでわかるの」
「見たからな。この目で」
この目で、見た？
あの場所にいたってこと？
「あの場でじゃない、ここでだ」
彼の声と共に、頭上に大きく映像が映し出された。
「わ、なに、」
「ああタイミング良いな。こんな風に、俺はここで色んな世界を見てる。これは君の生きてた世界の１９７個目のパラレルワールドだろうな」
「ひ、ひゃく…」
「ほら、母親が子供にご飯を食べさせてやってる」
スクリーンのように広がっている映像には、よくある日常のワンシーンが映っている。と思ったら、パッと映像は途切れまた暗闇が広がった。ゴーストはそのまま続ける。
「ここには、さっきみたいに色んな世界の様子が突然流れてきて、突然消える。そしてまた別の世界が映って、また消えて…それをずっと繰り返してる。そうやって腐るほど在る世界のあらゆる場面を、時間が分からなくなるくらいずっと見てきた。
その中に、君と弟が車にはねられるところも映ってた。君らの葬式も、骨が焼かれるところもね。だから分かる」
ゴーストが依然事務的な話し方だったからなのか。あれだけ知りたかった弟のことより、ある言葉が頭に引っかかった。
ずっと、ここで？
「あなたは、ずっとここにいるの？」
とうとう返事は返ってこなくなった。面倒になったのだろうか。
けれど気にせず続ける。
次々と浮かぶ疑問が抑えられなかった。
「ねえ、そもそも…この場所は一体なに？」
人間の手ではどうやっても作り出せそうもないくらいの、深い深い闇。少しとどまるだけでも恐ろしいと思うほどの。彼は、ここに居続けているというのか。まさか自分の意志で？
「あなたはここから出られないの？」
ずっとこの闇の中、ただ映される世界を見続けているのか。
沈黙は続く。質問に対して肯定しているように思えた。
「あなたは一体誰なの？」
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作者名：飯 | 作成日時：2021年9月2日 22時
