ここはロマンス大通り【ars】 (ページ11)

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結局、なかなか引き下がらなかった大学生に潤さんは「本当はしたくなかったんだけど...」って

駅前で見事な一本背負いをした。

投げられた大学生はキョトンとしてて、潤さんは倒れてる彼のその横にしゃがんで

「俺の職場、あそこね」

ここからも見えてる交番を指差す。

「え...！？警察...」
「でも俺今日は休みだし、ホントはこーゆーコトしたらマズいのよ。頼むからこれ以上人が集まって来ない内に帰って欲しいんだけど」
「あ......はい...すみません...！」

焦った様子で駅の中に逃げて行った大学生の背中を見送った潤さんが、ハァ...と息を吐き出した。

野次馬で集まってた人達も散り散りに動き出す。

「あの...」
「大丈夫？」
「...はい...」
「知り合い？元彼とか？もしかしてストーカー？」
「え...っと...」

ナンパされて遊びました、なんて言えなくて俯いた私の頭に大きな掌が乗った。

「ごめんごめん。言いたくない事もあるよな」

優しい声に、また涙が地面に落ちた。

「ごめん...なさ...」
「謝らなくて良いよ」
「...でも...っ...」
「俺はお巡りさんだよ？君を守るのが仕事だ」

分かってる。
お巡りさんだから、守るって言ってくれてるんだってコト位分かってる。
私じゃない他の子が同じ状況になってても、潤さんは同じことをした。

でも、「君を守る」って言葉はやっぱりやっぱり嬉しくて胸がギュウって苦しい。

「ポリ潤、非番なのに...何で...？」
「俺の実家、すぐそこなんだけどさ。勤務明けですっげぇ眠くて、家帰るのもしんどかったからちょっと実家で寝てたんだよ」
「...実家...」
「で、今から自分ちに帰ろうと思ったら、君が絡まれてた」
「......」

何も言えない私の肩を潤さんは「さ、帰ろう」って言いながら、ポンと叩いた。

一緒に駅まで歩いて改札を並んで通ったあの、ほんの少しの時間だって

私にとっては、今まで生きてきた中で一番幸せな瞬間だった。

たった18年しか生きてないけど、この先これ以上の瞬間があるのかな？って本気で思った。

結局、乗る電車の方向が逆ですぐにお別れになったけど

別々のホームへ続く階段に向かってる途中に振り返ると、潤さんも同じタイミングで振り返って

「バイバイ」って、声は聴こえないけど潤さんの口がそう動いてヒラヒラと手を振ってくれた。

お巡りさんの制服の時は手を振ってくれた事なんて無かったから、その姿が私はずっと忘れられなかった。