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「なぁ、君、少しばかり手伝ってくれないか」
手を上げ私を呼ぶ煉獄先生。
正直に言うとこの男は苦手な類だ。
オブラートに包んでも苦手に入る。
熱血でいつでも笑顔のような聖人君子、どこにでもいないような男だから価値がある。
そんなことどうだっていい。
早く炭治郎に会いたい。
「すまない、嫌だったか?」
「いいえ」
口早にそう言うとさらに顔を顰める。
いくら情に厚い男と言えど、こんな態度をとれば顔くらい歪める。
そもそもファンクラブがあるのだから、さっき断っていたら私はひねり潰されていただろうし、そうでなくとも炭治郎の耳に入り、嫌われる可能性だってある。
『それだけは避けたい』
嫌われるなんて、私が命を落とす。
嫌、そんなの。
重たいだけのプリントを歴史の教材室に運び込む。
こき使われてるの、私。
「疲れた」
「うむ!関心するぞ、ありがとう」
「あぁ、はい、そうですか」
嫌だ、近寄らないでくれ。
コイツは硬派で情に厚いと思わせておきながら、真っ黒な男。
何もない。
どうせ将来を幼い頃から塗り固められた人なんだろう。
言ったって「君に何がわかる」くらいなのは知っている。
距離が近い、離れようとしたとき、視界に炭治郎が映る。
私を見るなり、頬の筋肉を思いっきり緩め、ふにゃりと笑うと、
「聞いたぞ、煉獄先生の手伝いをしてるらしいな!」
えらいぞ、と褒めてくれる。
これだから偽善は良い、褒めてくれるから。
煉獄先生の足を潜って「それじゃあ」と冷めた声で言う。
駆け足で炭治郎に寄ればよしよーし、と頭を撫でてくれる。
“幸せ”
「さ、禰豆子も待ってる、帰るぞ!」
炭治郎が好き、いつだって優しくて、瞳に輝きがあって純粋で。
汚したくない、汚させない。
男や女の些細な私情なんかで穢させない。
「炭治郎、好きだよ」
「ん?あぁ、俺も好きだよ」
純粋な炭治郎。
こんな言葉、滅多に使わないんだよ。
。
。
。
「よもや、そういう事か」
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