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酒臭い ページ4

「君なんか今日酒臭いよ〜?」


ちゃんとしてよ?と、言いながら私の毛を摘んで嗅いでくる上司(ハゲ)を殴りたい。

煩いな昨日シャンパン頭から浴びたんだわ。
臭い落ちなくて悪かったわね。

セクハラといいますかなんと言いますか。




先輩にも「酒くせぇ〜」と笑われたし、今日は最悪だ。


本当に嫌だ。


憂鬱、という一言で片付けられる馬鹿みたいな日常。

せめてそれを少しの愛で満たしたい。



もう赤青黄の蛍の灯りが飛び交う新宿の街を歩いた。


いつもどうり、いつもどうりなのだ。




ただ、違うのは



「あぁ、彼なら指名されていまして」


「あへ?」




指をさされた先にはオバサンに腕を絡められる彼だった。


いやいや、何だよそのオバサン。


いつか私もオバサンになるだろうけど、そんなメイクぜってぇしない。

しない(断言)


やっぱり、金なのだろうか。



そう思って、お酒を一口含む。

本当に退屈だ。


隣にいる人気のない、ホストの話を聞き流す。
彼は、まぁ、ホスト、って言っても言われなきゃ気付かない顔だ。


こう思えば私ってば面食いね、と感じる。




ただ、聞き流しは、ある言葉で遮られた。


「人って、絵本みたいに薄っぺらいんですよね」



「え?」




そう、隣の彼が言った、その言葉で。
彼は聞き流してなかったんだ、と笑って続けた。



「所詮は顔なんですよ」


「シンデレラだったら、王子様は舞踏会で一番美しかったシンデレラを選ぶ訳です。」


「けどそれは、顔だけの愛です。」


「シンデレラが一生懸命、汚い姿を見て、惚れたならそれは本当の愛です」


心臓がドク、と動いた。



「結局は、金色夜叉みたいなものなんです、絵本も、ホストも」



それだけ言うと、指を指してその場を離れていった。



そうなのか、と私は、項垂れてしまった。


ぱさ、と束で落ちる毛は酒臭くて。




枝毛だけ、視界の端に残った。

夜叉→←シャンパンの滝



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ゆる - 面白かったです!!完結おめでとうございます!! (2020年8月7日 9時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
いぬお(プロフ) - 名有りさん» ありがとうございます!励みです! (2019年11月18日 16時) (レス) id: 5294fb0fb4 (このIDを非表示/違反報告)
名有り - 凄い好きです!!!応援してます! (2019年11月18日 7時) (レス) id: 866a33e64d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いぬお | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年11月13日 20時

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