風柱とズルい継子の関係。【不死川実弥】

19.風の呼吸って言ってみ？w ページ19

．


いつもの掛け合いにホッとした。
気まずいのはごめんだ。


とは言え、距離を感じた師範の言葉に不安が残る。
感じた距離が気のせいであってほしい…


シリアスモード全開で迎えた日没。



『ちょwww師範！風の呼吸って言って下さいよwww』

「うるちェ！」

『うるちぇwww』



眉間に皺を寄せ、ムスッと腕を組む師範は、ちんまり。という言葉がぴったりで。


いくら師範とはいえ、3歳そこそこの子供が凄んだ所でかわいいでしかない。


『あはは！そんな可愛いお顔で睨まないで下さいよ！』

「くしょがァ！ンな暇なら一体でも鬼刻んで来やがれェ！」


前回の新月も幼くなっていたはずだが、前回は、体の小ささを予想し、師範は任務に同行しなかった。

しかも、その日に限って現場が遠く、日没前に屋敷を出ないと間に合わなかった。

どうにか一目幼い師範を…！
任務を終え、急いで帰宅したが、時既に遅し。ちっちゃな師範には会えなかった。



因みにだが、今日は休日。
月の満ち欠けで年齢が変わると言う事がはっきりしたので、お館様の命により、新月はお休みになったのだ。


お館様の采配…見事!!!


『師範！ちょっとだけでいいんです！ぎゅーさせて下さい！』

「誰がさせりゅかァ！」

『ぶふ！じゃーほっぺスリスリ！100歩譲ってほっぺぷにぷに！』

「触ンじゃねェ！俺ァ今日部屋から出にェ！入ってくんじゃねェぞ！」

『そんな殺生な！』


久しぶりの子供なんだ！触らせてくれ！
待って、と握った師範の手。


その手が思ったよりも小さくて、そこに視線を落とした。


いつもの無骨で豆だらけの手じゃない。
何も知らない柔らかく、滑らかな手。


当たり前だけど刀なんて握った事がなくて。
悲しみも憎しみも知らない手。


この頃の師範は幸せだったのかな。
もし、戻れるなら。もし、鬼がいない世界だったら…。


師範は家族を失う事も、玄弥くんと仲が悪くなる事もなかったのかな。


『……』

「……兄弟でも思い出したンかァ？」


僅かに切なげに寄った眉頭。
その顔を晴らしたくて、否定したい。


でも、師範のもしも話を思い浮かべていただなんて、言えない。


『ちっちゃいおててだなと思っただけですよ。』


この小さな手が、いずれ大きく逞しくなって、沢山の人を掬う。


尊い。
でも、こんなにも悲しい。


『師範が幸せになれますように。』

「何だァ急に。」


不幸なんざ思った事ねぇよ。
ハッ！といつもの様に鼻で笑う師範は今3歳児で。
そのチグハグさにやっぱり笑ってしまうのだった。




あさひ

20.サラっと失礼な冨岡さん。→←18.おはぎ、作りました

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す