浅尾きゅん☆ in tigers 2

後悔 ページ11

●鳥谷

　
　『拓!!!』


　『浅尾!!!!』


　マウンド上で急に拓がよろめき、異変に気付いたが、一瞬振りかえった直後に倒れこんだ。


　嘘だろ・・・・


　内野、外野関わらず皆マウンドに駆け付けた。


　観客席からは悲鳴とどよめき。


　試合は一時中断となった。


　「拓！ 拓！ しっかりしろ！！！」


　うっすらと目を開けたが、意識が朦朧としているようだ。


　「はぁ・・・はぁ・・・」という荒い息だけが聞こえる。


　「上本に続いて・・・浅尾まで熱中症か？」


　「この暑さだもんな・・・無理もないか・・・」


　違う・・・


　「あっつ・・・！」


　拓の頬に手を当てると明らかに40℃近い熱が出ているのが分かる。


　やっぱり・・・


　「めっちゃ熱あるみたいです・・・」


　「熱中症って・・・そんなに熱高くなるものだったっけ・・・？」


　「もしかして、熱中症じゃないとか？？？」


　「元々熱あったのに無理して出てた・・・とか？」


　誰が言ったのは分からないが、当たっている。


　「元気そうに見えたんだけどなぁ・・・」


　「でも拓ならありえるよ・・・体調悪くても絶対隠すと思う・・・」


　「ほんとだ、めっちゃ熱高いぞ。」


　
　
　その時だった。


　「鳥・・・谷・・・さ・・・」


　「そうだよ！！ しっかりしろ！！」


　「ごめん・・・な・・・さぃ・・・・」


　「何謝ってんだよ・・・」


　「ごめん・・・なさ・・・」


　うわ言のように謝ってばっかりいる。


　こんなことになるなら、昨日の夜、無理にでも止めておけば良かった・・・


　試合に出さずに病院に行かせれば良かった・・・

　
　ごめんな、拓・・・


　色んな思いが駆け巡る。


　「ケホ、ケホッケホッ・・・」


　今度は辛そうに咳込む。

　

　これ以上試合をとめるわけにはいかない。


　拓は担架で運ばれ、救急車で病院に搬送された。
　
　

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