第28話 ページ35
話し終えたとき、『Trickstar』は気まずそうな顔をした。
こんな話だと、思わなかったとでもいうのかな。
遅いんだよ。
だから無粋だ、止めろ、と何度も訴えたというのに。
『はい、話し終わったんだから帰った帰った。』
しっし、と手を振り僕は『Trickstar』が迷惑だと伝える。
そこではたと気づき、氷鷹くんに話しかける。
『君は”その喋り方”と言ったけれど、あれも僕の”素”だ。勝手に作っている人格だと思って否定しないでくれ』
レオが、僕に似てしまったのは僕の素を真似ていたからだ。
そのほうがインスピレーションが沸くんだと。まぁ、そのうちにレオもそれが素になったみたいだけど。
まぁ、僕は素が二つあったし、レオが僕の真似をした、と変な噂がたっても困るから”今の”口調が素であるかのようにふるまってきたわけだけど。
『Trickstar』が教室へ帰っていく。
僕は一人、廊下に立ち止まって空を仰いだ。
もうこれで、この学院に用はない。
さて、どうしようか。
『もう一回、海外に行くか』
窓の外を眺める。
もうわずかに、日が傾き始めていた。
__綺麗だな。
歩き出す。
昔のことを話したせいかな。こんなにも、切ないんだ。
僕は自分を過信しすぎていた。まるで自分が本当に王になったかのようにふるまっていた。
まぁ、これからの五人を見守れないのは少し未練があるけど。
これでもう、本当に終わったなぁ。
『・・・今日は、ホテルに泊まろうかな』
今は、渉と顔を合わせたくない。
大好きだけど。大切だからこそ、こんな感情を抱いてしまった。
渉。
零。
奏汰。
宗。
夏目。
今まで、ありがとう。
今度こそ、お別れ。
もう会わないように。僕は、日本を出る。
アイドル『re』__王は、消滅する。
また、逃げてしまう僕を許して欲しいとは言わない。
だけど、せめて。祈らせてほしい。五人が、渉が。幸せになりますように。
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作者名:音琥@逆先夏目 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/jjijwihief/
作成日時:2019年11月4日 17時