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ぐらりとバランスを崩し、倒れゆく私を逞しい腕が抱き留めた。
ふわりと、会いたいと焦がれた匂いに包まれる。
「こいつがじじいの仇か。ナツ……A」
「らく……さ、す……?」
揺れる視界の端に映ったのは、確かにラクサスだった。
「ナツ。Aを任せんぞ」
そう言って私はそっと降ろされる。
ラクサスがハデスに頭突きを食らわせた。
ハデスがよろめく。
「情けねえな、揃いも揃ってボロ雑巾みてーな格好しやがって」
「だな」
目を開ける気力を残っていないが、ラクサスの声と魔力は痛いほど伝わってくる。
「なぜお前がここに……」
「先代の墓参りだよ、これでも元妖精の尻尾だからな。しかしこいつァ驚いた、2代目さんがおられるとは……せっかくだから墓を作って拝んでやるとするか」
見ずともわかる、ラクサスがハデスを圧倒しているのだろう。
私は小さく微笑んだ。
「世界ってのァ本当に広い。こんなバケモンみたいな奴がいるとは……俺もまだまだ……」
「何言ってんだ、ラクサス!」
ハデスの魔力がラクサスに迫っているのを感じ、私は目を開けた。
「ラク、サス……よけて」
「俺はよ……もう妖精の尻尾の人間じゃねえけどよ……じじいをやられたら……」
「よけて!!それを食らったらダメです!」
「怒っても、いいんだよな」
その言葉と共にラクサスに魔法が直撃した。
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作者名:緋蝶 | 作成日時:2017年12月9日 23時