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噴水が優雅に噴き上がり、城の彫刻はなんとも優美だ。
風が吹く度、植わっている花の花びらが舞う。
「すごいねぇー、綺麗だ……」
花の香りに私は頬を緩ませて噴水の縁に座る。
ふと、ラクサスが歩み寄ってきて、髪を触られる。
「どしたの、ラクサス?」
「……花びらついてたぞ」
そう言って私の手にその花びらを乗せて、くしゃりと髪を撫でられる。
私の長い銀髪が水の光を反射して青い光を帯びる。
「ありがと……てか、くすぐったいよ」
隣に座ったラクサスが、暖かい陽射しに当てられたのか、眠たげに目を細めた。
「お眠さんだね、ラクサス」
「違う……子供扱いしてんじゃねえ」
そう言いながらも、私の肩にもたれかかってきたラクサスは、そのまま寝息を立てて寝てしまった。
「こーしてるとめっちゃ可愛いなぁ」
近くで見ると整った凛々しい顔立ちが一層目立つ。
私は幸せを噛み締めながら、眠るラクサスを撫でてやる。
頭を擦り付けてくるから、首元に髪が触れてくすぐったいの何の。
(…………何だこの可愛い生き物は!!)
内心くーっと悶えて、私は辺りを見回す。
今の時間帯はあまり人がいないらしい。
ゲートの方に、見覚えのあるツインテールの頭が見える。
「あ、ウェンディ……」
私が名を呼ぼうとしたその時、突然ウェンディは倒れた。
「!?……ラクサス、ごめん!」
そう言ってラクサスの頭を肩からそっと下ろして私はウェンディの側に駆け寄る。
「これは……っ!!?」
状態を確認しようとしたその時、全身から力が抜けて、私は意識を失った。
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作者名:緋蝶 | 作成日時:2017年12月9日 23時