#15 ページ16
敦side
A「2人とも、痛いのは嫌いかい?」
鏡花「…好きじゃない」
敦「僕も…嫌いです」
手元で珈琲カップを弄りながらそう聞いてきた有島さんに、素直な気持ちを伝える
痛いのは…嫌だ。怖い。
死んでしまうのだって…
太宰さんから、有島さんが本当は死んでいることを聞いた
怖くないのだろうか
自分が実は死んでいただなんて
僕だったら…きっと耐えられない…
クッと唇の端を噛み締めていると、有島さんがコトリとカップを動かした
A「そう。痛いのは嫌い、それは当たり前のことだ」
鏡花「…でも、貴女は違う」
鏡花ちゃんの一言に有島さんは少し口角をあげた
どこか自嘲するような笑みに見えた
A「私には痛覚がない、恐怖もない。当たり前を成さない私は、人として欠落しているのさ」
ニコリと笑う有島さん
太宰さんもそんなことを言っていた気がする
有島さんは、自分の異能の影響で痛みも恐怖も感じられないと…
だから有島さんは、自分のことを未完の人であると言うことも…
彼女にとって痛みとは、ちゃんとした人であるという…生きているという証明だと言うのだ
A「人ならざる私を、人たらしめるのが太宰だ。私にとって太宰は…替えのきかない、唯一無二の存在であったんだ…」
有島さん本人も、まるでその事を確認するように一言一言丁寧にそう口にした
それから少しの沈黙の後、有島さんは切り替えるように顔を上げた
A「頼りにしていた人物がある日突然行方をくらませた。私はどうしたと思う?」
敦「泣いた…とかですか?」
A「違うよ、敦くん。私は笑ったんだ。三日三晩、この両目が熱を帯びるほど笑ったさ」
「そうする他無かった」という有島さん
嗚呼、そうか
彼女は分からなかったのか
太宰さんという彼女にとって大きな存在が消えた時感じたであろう、胸の痛みが
何も感じなかったが、何かは感じたのだろう
だから…笑ったんだ…
行き場のない感情を吐き出すために…
A「私は君たちを羨ましく思うよ」
78人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ