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Aが仕事に復帰してもうすぐ半月が経つ
はじめの内は姐さんも心配していたが、Aの仕事ぶりは変わらなかった
というより、黒服の話では前よりも尋問が加虐的になったと聞いた
Aの尋問という拷問に耐えかねて、精神崩壊を起こす者も現れたというのだ
最近会っていなかったのもあり、様子でも見ようと思った時
執務室にAが現れた
久しぶりに顔を合わせたAは、いやに顔色が悪かった
幾分がやせこけたようにも見える
いつもはまっすぐに俺を見つける闇色の瞳も、くすんでいる
中也「…なンかあったのか?」
Aの異変に思わずそう聞いてみたが、返答はない
その代わり、覚束ない足取りで俺の目の前にやっていた
A「中也…」
―――嫌なら殴り飛ばしてくれて構わないから
はっきりと声に出さず、口だけを動かしそう言ったA
その真意を聞く前に、Aは俺に腕を回し身を寄せた
中也「おい、A。どうした?何があった?」
A「私…本当に生きているのかな」
俺の問いに小さな声でそう答えたA
それは考えればすぐに俺でも気づいたことだった
Aが痛みに固執するのは、それがAにとって唯一生きているという証拠になるからだ
だけど、その望みを与えられるのはもういない太宰だけ
やつれていたのは自分が生者という確証が得られなくなったからだ
Aにとってそれは大きな問題なんだ
そうと分かると、俺はAをきつく抱きしめた
Aという1人の人間がいることを確かめるように
手の届くところにいる仲間を取りこぼさないように…
中也「悪い…俺にはこれくらいしか出来ねぇ」
A「…いいんだ、十分だ。十分だよ…中也。ありがとう…」
―――これ以降もAはこうして俺を頼ることがあった
だけど、年が経つにつれその頻度が下がり、俺が西方へ行く頃にはほとんどなくなっていた
他に良い奴を見つけたのか、なにかいい方法があったのかはわからないが、
俺の顔を見るだけで安心したように笑うAを見れるだけで、俺は満足だった
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