世界一蹴の旅【ユノ・マリィ】 ページ9
私は目の前のプリントをきっとねめつけた。
右手に持っているお気に入りの水色のシャーペンにぐっと力が入る。
その力がシャーペンから芯へと伝わり、ぽきりと芯が折れた。
紙を貫通してお父さんが大枚をはたいて購入した机に跡が残っていないがどうか慌てて確認する。
ぺらりとプリントをめくると、そこには木目がただあるだけだった。
ふー、危なかったな。思わず安堵の声が漏れる。
「…セーフ」
「ユノ、どうしたの?」
「あ、いや。ただ単に芯が折れちゃっただけで」
「そうなの。今日、豚肉の生姜焼きと、焼き鮭どっちにする?」
「豚肉の生姜焼き!」
「はーい、了解」
お母さんは私にくるりと背を向けると、冷蔵庫を開けた。冷蔵庫が白い光を発する。
「これ、298だったのよね」
と、言ってお母さんが冷蔵庫からパックに詰められた豚肉を手に取る。
現在私がいるのは自宅のリビングである。
夕飯前なので、リビングにはご飯のいい匂いが周囲を放浪していた。
うーん、いい匂いだなぁ。
私はそう思ってはっと我に返った。ダメダメ、宿題しなきゃ!
って、宿題じゃなかった。
宿題はとうの昔に終わっていて、今は職業体験についてのプリントとの格闘真っ最中。
「今度の参観日、楽しみね」
「あ、うん!そうだね」
適当にフォローしておいて、再びプリントに向かう。
さて、どこにいこうかな?
『ひだまりベーカリー
唐揚げモータース
39マート
スカイハイ巨大図書館
エンジン消防
出雲総合病院・薬局
ポワロ劇場
すずらん
恐羅神社
はしごたか』
「んーっ、やっぱ無理!」
私はプリントとシャーペンを放り投げ、しまったと思って慌てて回収、びっくりしてあんぐりと口を開けるお母さんに向かって「部屋でゆっくりしてくる!」と、適当な嘘をついてから部屋に転がり込んだ。
バタン!と大きな音を立ててリビングと自室へとつながる廊下を隔てているドアを閉めた。
ユノが出て行ったリビングルーム。
「……ん?」
☆★☆★
「ふう、そろそろ寝るとするか」
と、あたしは先ほど引いた布団に背中から倒れ込んだ。あたしの体を布団が優しく受け止める。
今朝登校する前に布団を干したからだろうか、お日様のいい香りがした。
あたしの家を照らすのは、転生学園で明々と教室を照らすELDではなく、埃が蓄積した電球蛍光灯である。
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雨読@低浮上…?なのか?(プロフ) - まだ四十八話だったのですが、続編の考査編へ移行させていただきます!これからも宜しくお願い致します! (2020年7月26日 16時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新しました。 (2020年7月10日 13時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@多忙(プロフ) - 更新します。 (2020年7月10日 8時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - 更新しました。 (2020年6月30日 18時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
雨司@元ユリイ(プロフ) - お久しぶりです。更新いたします。 (2020年6月30日 17時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スカイハイ転生学園一同 x他9人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakyomatsu1/
作成日時:2020年5月12日 16時