46*進路の話 ページ47
お風呂からあがり、リビングから聞こえた声に私は動く事が出来なかった。
部屋には、お父ちゃんとお母ちゃんがいて、お風呂上がりにアイス食べな〜って言われてたけど入るに入れない。
アルゼンチンってどこ？…いや分かるけど。
なんで急に？
いつかはプロ選手になって、移籍とかしちゃうのかなとかぼんやり薄目で見る程度に考えていた弟の未来。
大学とか吹っ飛ばしてアルゼンチンに行きたいと。
携帯で[日本からアルゼンチン]と検索すると
飛行機で乗り継いで36時間。日本から1番遠い国。地球の裏側。
行ってしまったら徹に会うのが難しくなってしまう。
｢徹がバレー大好きなのは分かっているつもりよ。
…アルゼンチンにどうしても行かなきゃいけないの？｣
いつも笑顔絶えない友達みたいな明るいお母ちゃんの、涙混じりの声に胸が苦しくなる。
｢本気、なんだね？｣
穏やかなお父ちゃんの確かめる様な真剣な声。
｢俺は自分が使えなくなるまでバレーを辞める事はない。
いずれは海外にもバレーをしに行きたいと思っていた。それが早くなってしまうけど、監督の元でバレーをしたい。｣
言い切ってしまう、徹の声に私がどうこう言っても意思が変わらない事を悟る。
やると言ったら聞かない。頑固な所、突き詰める所がある。
引き留める事はできない。
｢…急に海外とか聞いてないんだけど｣
｢A…｣
リビングに足を踏み入れると、父母と向かい合う形で座る徹がいて、私はお母ちゃんの隣にそっと腰を下ろした。
泣くのを我慢してる顔に、こちらが泣きそうになってしまう。
何も口を出せないからただお父ちゃんと話す徹を見つめるしか出来ない。春休み中にお父ちゃんも学校に来て進路の話を聞きに行くそうだ。
｢Aは進路、話していた県内の大学を目指すのかな？｣
言葉に詰まっていた。
東京の大学のこと、お母ちゃんには｢東京もいいかなぁ｣といつものガールズトークの中で言っていたけどきっと本気には捉えられて居ないと思う。
次の春には徹が居なくなって、私まで東京に行ったら…
出張が多いお父ちゃんも今は春休みだから帰ってきてくれてるけど、居なかったらお母ちゃんはこの家に1人になってしまう…？
｢わ、たしは…｣
｢徹の話聞いた後でAもおどろいているよね。｣
｢お父ちゃん…、｣
｢うん。ゆっくりでいいよ｣
｢もう少し、考えてから話す、ね｣
好きな人の側に行きたいなんて、とてもじゃないけど言えなくて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モカ(プロフ) - ぽぽさん» コメントありがとうございます🩷全部読んで貰えて嬉しいです！映画見たら再熱して久しぶりに帰ってきました😄もだもだしてる恋愛話になりますが、お付き合い頂けると有り難いです✨ (3月4日 20時) (
レス) id: 82c75c460a (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - 文章がおかしくなってしまいすみません🙇♀️陰ながら応援しています！！ (3月4日 18時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - コメント失礼します。モカ様のHQの作品に魅了されて2、3年前にすべて読破しまして、見覚えあるタイトルに惹かれて拝見したらモカ様の作品でとても驚きました ; ; 今作も大好きです😽💖 (3月4日 18時) (レス) id: cce9129f81 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：モカ
| 作成日時：2024年2月28日 10時
