終章 鐘が鳴る ページ49
終章 鐘が鳴る
６月１１日。
早朝、代表に呼び出された防弾少年団の８人のメンバー達は、揃って事務所へと訪れていた。
「遂に、防弾少年団初のショーケースが明日に迫った。どうだ……今の心境は」
RM「僕達に迷いはありません。明日は、僕達にとって大切なスタートです。今は、それに向けて出来るだけのことをするだけです」
メンバーを代表して、リーダのナムジュンが答える。
その言葉通り、シヒョクを見つめる８人の目には真っ直ぐで強い光が宿っていた。
「お前たち防弾少年団は技術と才能と個性に溢れた、韓国、いや、世界でも他に類のないグループだ。
その分、抱えるものも、この先降りかかるものも大きくなるだろう。
その覚悟は、できているか？」
シヒョクの言葉の中には、体が“女”という常識破りな存在を抱える彼等への心配が含まれていた。
RM「僕は、自分達を信じています。そしてもちろん、レン……いや、Aのことも」
この数か月間で見えた、菅野Aという人間と、それが持つ存在価値。
最初こそ疑っていたが、今はなぜ代表がこの者を、リスクを背負ってまで迎え入れたのかが分かるような気がする。
するとシヒョクはそれまで硬かった表情を緩め、にこりと笑った。
「……そうか。それなら、安心だな」
言ってシヒョクは、話は終わりだと背を向けた。
RM「待ってください、シヒョク代表」
「なんだ」
急に思いつめたような表情で声をかけるナムジュンに、シヒョクが振り返る。
RM「その……レンのティザー写真がまだ公開されていません。既に防弾少年団が７人グループだと思い込んでいるファンも多い……。一体、いつになったら……」
「明日、だ」
シヒョクから返ってきた言葉に、A意外のメンバー達は唖然とする。
明日は、デビュー曲のミュージックビデオが公開される日だ。
そんなことをしたら……。
JN「ミュージックビデオに埋もれて、Aの存在が視聴者に行き届かなくなりますよ……っ！？」
ジンが思わず声を荒げた。
だが、シヒョクはあくまで落ち着いた様子で、こう言った。
「……そうだ。だからこそ明日、そしてミュージックビデオの公開１時間前に、Aのティザーを公開する」
***
２０１３年、６月１３日。
遂に、防弾少年団がデビューを果たす。
それはのちに華々しい成績を打ち立てる彼等の物語の、ほんの小さな始まりでしかなかった。
―― 続く ―――
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作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
