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とりあえず手水場へ行き、風習に従って、手を洗い口を漱いだ。
寒い中、冷たい手水場でしっかり身なりを整える人は少なくて、いても年配の人ばかり。
そんな中で、当然のように手水場へ向かった櫻井さんと二宮くんが意外な気がした。


「昔ね、和の父親に習ったの」


櫻井さんが耳打ちしてくる。
そう言えば、櫻井さんも二宮くんも、いいとこの出だもんなぁ、なんて感心しながら、2人の見よう見まねで私も整えた。
その横で、やっぱりスマートな身のこなしで、清めている松本さんと、
水遊びしてんじゃないか、って勢いで水しぶきをあげて、その冷たさに「キャッキャ」してる天然組。
なんだか、可愛らしくて笑っていたら、周りのおじいちゃんたちにも笑われていた。


みんなで、見なりを整えた後、参道へ並ぶ。
神社は激混みで、本殿になかなか辿り着けそうもない。
ここから本殿までは、15列くらいに横並びして、少しずつ進むみたいで。
自然とみんなで固まることになる。

私の隣には二宮くん。
………新年早々、カッコいい。

その二宮くんが、チラリと私を見て、鼻で笑った。

「前から思ってたんだけどさ。
高橋さん。あんま、人の目を気にし過ぎない方がいーよ?
疲れちゃわない?」


二宮くんが、ふふん、と鼻で笑うように言う。
少しだけ、ムッとしてしまう。


「二宮くんは、もう少し、人の目、
気にした方がいいと思う。
………この注目度」


「ふぅ〜ん」


軽く流すみたいな返事をした後、あろうことか、後ろに並んだ女の子にむかって手を振ってみる二宮くん。


「きゃ〜!」


歓声があがって、周りの人たちも、
「なんだなんだ?」と視線を送ってくる。


「〜〜〜////!!!」


勝ち誇るように、私を見てニヤリと笑う二宮くん。
恥ずかしいのと、ちょっと腹立たしいのと、でもやっぱり可愛いと思ってしまうのとで、声にならなくて。

複雑な心境のまま二宮くんに背を向ける形で横を向き、そのままサトシさんに話しかける。


「ん?」


「どうしたの?」って訊いてくれるような視線に和んで、ぶんぶん、と頭を振った。


「ちょっと一次避難です」


「いちじひなん?」


隣の二宮くんが、私の背後からピョコピョコともぐらたたきの要領で顔を出してくる。
ちょっとおかしくて、笑いそうになるけど、
無視を決めこんで、サトシさんと話す。

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作者名:えりんこ
作成日時:2014年9月16日 16時

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