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「はい」


促されるようにして、出した手のひらに缶入りのココアがのせられる。


「ありがとうございます」


「頭使ったあとは、甘いモン欲しくなるからね」


サトシさんを代弁するように櫻井さんが言う。


「和のも。ん」


「あー、どーも。ありがと」


二宮くんが言う。


「ていうか、地下鉄乗るタイミングで渡すって………まー、ありがたいですけど。
サトシと翔さんのは?」


「もう飲んじゃった。寒くてさー」


「あー………だよね」


二宮くんが苦笑しながら、缶を振って、
そっと頬に当てた。


「あったけ」


………可愛い。

思わず見惚れていると、ニコニコ笑ったサトシさんと目があった。


「高橋ちゃん、今日は大丈夫?」


「え?」


「定期」


「て………」


脳裏に浮かぶのは、定期と間違えてプリペイドカードを翳した、あの日の私。


「………大丈夫です」


時代劇の印籠のように、サトシさんにペンギンの定期を見せると、サトシさんがふふふ、と笑った。


「なに、翔ちゃんとだけじゃなくて、サトシとも協定結んでんの?」


二宮くんが、笑いながら私とサトシさんを見る。


「そう。キョーテー、結んでんの」


「ね?」と首を傾げられて、コクンと頷くと、サトシさんがふわぁっ、と笑った。
ココアよりずっと効きめある温かさに癒やされていると、にんまり幸せそうに笑っている櫻井さんの姿が目に入る。
………たぶん、私も今、同じ顔している。

クスクス笑った二宮くんが、ヤクザ屋さんみたいな大股な足取りでサトシさんに近づいて、ガシッと肩を組んでグイッと顔を近付ける。


「翔ちゃんと何、話してたのよー。
俺の翔ちゃんと」


「何も話してねーよ」


「翔ちゃんとも協定かよ?」


「話してないって」


傍から見ると、完全にいじめっ子な図。
2人のサイズ感で可愛らしいやりとりに見えちゃうけど。


地下鉄への階段をヨタヨタと降りていく2人を見てから、櫻井さんを見ると微笑ましくて仕方ない、と言った感じ。
2人でどちらからともなく、頷き合って階段を降りて前の2人に続く。

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作者名:えりんこ
作成日時:2014年9月16日 16時

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