秋桜（by.ROOMS）8『完結』 (ページ38)

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二宮くんが、プレゼントを手に、ふふふ、と笑って

「ありがとう」

と、言ってくれて。
サトシさん、松本さん、相葉さんへと回覧されていく。
櫻井さんのところまでいって。みんなが、ジッと櫻井さんの様子を見つめる。

………櫻井さんは、プレートが入った箱を手に、ふと目を丸くしたあと、
目尻をいっぱいに下げて笑った。

「………5枚、だ」

櫻井さんの一言で、周りの空気がふわぁ、と暖かくなった気がして。
私も微笑んでしまう。

私が渡した餞別は、5人用のもの。
引っ越した後もきっと訪れる、「5人で迎える朝」に、使ってほしくて。

「高橋さん」

二宮くんに呼ばれて、ん？、と振り向く。

「5枚しかないんだから、遊び来るときは、ちゃんと自分で持ってくんのよ？
マイプレート、マイカップ、マイお箸も、かな」

クスクス笑いながら二宮くんが言う。

一瞬、ちょっと意地悪にも聞こえるその言葉は、
実は、私が来ること前提で向けられた、思いやり溢れる言葉で。
思わず目頭が熱くなる。

二宮くんは、こうやって、優しい。

………ここにいる人たちは、みんな、泣けちゃうほど優しい。

「高橋さん。ありがとうございまーす」

ちょっと戯けた櫻井さんの言葉に、4人が声を合わせて頭を下げる。

「「「「ありがとうございまーす」」」」

くすぐったくて、おかしくて、頷いて返すことしかできないけど。
その感謝の言葉が、とても、嬉しかった。

「じゃ、さ、食べよっか？ねっ！」

なんだかちょっぴりしんみりしそうな空気を嗅ぎ取って、相葉さんが言う。

「あのねー、飯ならともかく、お菓子ってそう言われて一斉に手をつけるもんじゃないでしょ」

二宮くんがそう言って相葉さんを諭す横で、相葉さんの掛け声通りに手を伸ばしてポッキーを掴んでいたサトシさんがきょとん、とする。

それに気付いた二宮さんが、笑いながらサトシさんをペシッ、と叩いて。
サトシさんは何で叩かれたか分からない様子でとりあえず、そのままポッキーを囓る。

それを見て、目尻をいっぱいに垂れ下げて笑う櫻井さんと。
同じようにポッキーを掴んで、ポッキーでサトシさんと乾杯する相葉さん。

その相葉さんの肘がぶつかって倒れそうになるコップを素早い動きで避難させながら、そのやりとりに笑う松本さん。

いつもの5人がいて。
それを見ることが出来ている自分は、今、この瞬間、世界一幸せ者な気がした。