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「翔ちゃん、モノが多過ぎんのよ。
部屋数足りないんじゃないの?」
マンガから、顔も上げずに二宮くんがさらりと言う。
「部屋数増えたら、そんだけまたモノも増えちゃうんだよ。俺の場合」
苦し紛れの弁明をする櫻井さん。
………でも、櫻井さんの話しも頷ける。
ざっと部屋を見渡すだけでもわかる、櫻井さんの知的好奇心の旺盛さ。
DVD、CD、本に辞書、雑誌に雑貨。
櫻井さんにとっては、全てが興味深い対象になって、それを探求できるだけの能力もある。
それが、多方面において発揮されるんだろう。
結果、モノは増え続ける。
「ねー、そろそろ始めない?」
終息する頃合いを見ていただろう松本さんがDVDケースを仕舞いながら言った。
みんなが、パタ、と動作をやめ、ローテーブルにつく。
それを見守った松本さんが、プラスチックコップにジュースを注ぎ始める。
テーブル上には、焼きチョコ、ポッキー、オトナきのこの山。それから、ポテトチップスやナッツ、スナック菓子が並んでいて。
フツウの高校生が集まるときの、フツウの光景が広がっていた。
お馴染みな顔ぶれのお菓子に、ホッとする。
初めて訪れた、男性の独り暮らし用の部屋で、ご立派な料理が並んでいたら、緊張してどうしようもなくなってしまっただろうから。
「ねぇ、ねぇ、今日は誰が乾杯する?」
ウキウキを隠そうともせずに、相葉さんが言う。
「え?また乾杯すんの?」
既に口先までコップを運んでいた二宮くんが、その手を静止して訊く。
ていうか、隣のサトシさん、もうコクン、て飲んじゃってます。………本人は、隠してやり過ごせたと思っているようですが。
「じゃあさ、じゃあ、俺やってもい?
俺、乾杯してみたかったんだよねっ」
「「「「いーよ?」」」」
「………いきます」
相葉さんが咳払いをして改まる。
「乾杯っ!」
「「「「「か、乾杯」」」」」
相葉さんが自分でやりたいと言ったわりに、シンプルで唐突な乾杯の音頭に、全員でペースを崩しながらも、コップを傾け合う。
「あ、そうだ。忘れる前に………」
持ってきた餞別の品を二宮くんに渡す。
「ん?何?」
二宮くんが紙袋から箱を取り出す。
中身はセットのアカシアプレート。
お皿はたくさんあるかもしれないけど、新しい生活に相応しいものを贈りたくて。
料理好きな松本さんもいることだし、とカフェっぽいオシャレなものを選んだけど………
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作者名:えりんこ
作成日時:2014年9月16日 16時