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「引越し前に、翔ちゃん家で集まろ？
相葉サンと潤くんもよぶから。
壮行会？しようよ」
二宮くんから言われて、ビックリして顔をあげる。
送別会、じゃなくて、壮行会。
そのことに、二宮くんが櫻井さんにむける優しさを知る。
「当分、ヒマでしょ？」
二宮くんがからかうみたいな言い方をしてきたけど、思わぬお誘いに感激している私はコクコクと大きく頷いた。
ふふふふ、って二宮くんが笑って、二宮くんの歯がちらりと見えた。
「じゃ、日にちは連絡するから………って、俺、高橋さんの番号、知らねーや」
言われて気づく。
「ほんと、だ………」
「スマホ、出して」
Bumpして、お互いの連絡先を得る。
たったコレだけのことなのに、ずっとしてこないで来たことに驚いてしまう。
「………んなもんなくてもさ」
「え？」
「………こんなもんなくても、俺たちは繋がっていたよね。ちゃんと。すごく近いトコ、いたんじゃないの」
「………！」
二宮くんの言葉が嬉しくて
だけど、その過去形が悲しくて
複雑な気持ちのまま、二宮くんの名前と番号が表示された画面を眺めていた。
「ふっ、何てカオしてんの」
「？」
二宮くんがたぶん、歴代最高に優しい顔をして、私の額を小突いた。
それを皮切りに、じんわりと涙が浮かんできたから、手のひらでぐいっとこすった。
今日は、ピンク、ないんだから。
右、左、右、って、手のひらでこすっていたら、ポンポンポン、て。
二宮くんの左手が私の頭を一定のリズムで優しく叩いてくれて。
不思議と、安堵感みたいなものが広がって、涙は引っ込んだ。
「なんか俺、赤ちゃん寝かしつけてる気分なんだけど」
二宮くんがそう言って笑った。
「今日はどうすんの？」
「え？」
「ココで俺、見送んの？
それとも一緒帰んの？」
二宮くんがフーッ、て深く息を吐きながら訊いてきた。
「………一緒、帰る」
「リョーカイ。
んじゃ、手、出して？」
散策の日、みたいに。
二宮くんの少しぷっくりした白い手が目の前に差し出される。
私はおずおずと、その手に自分の手を重ねた。
ギュッと握り締められる手に、その体温に、泣きたくなるのは何でだろう？
「手でこすんないで、流しときなさいよ」
二宮くんが歩き出しながら、そう言った。
「泣くのは、ワルイことじゃないんだから」
そうだね、と思う。
だって、不思議とこの涙は、暖かいんだ。
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作者名：えりんこ
作成日時：2014年9月16日 16時
