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42.11 ページ18

「サトシさんも買いたかったんですか?りんご飴」


りんご飴の屋台へ向かいながら訊くと、サトシさんが指差す。


「ん。どっちかというと、その隣」


見れば、りんご飴の隣は綿菓子屋。
人気のアニメイラストが描かれたピンクや水色、黄色の色とりどりのビニール袋に詰められた綿菓子が、物干竿みたいな木枠に垂れさがっているのが見えた。


「わたあめですか?」


似合うなー、と思いながら、ふふ、って笑っていると、サトシさんが立ち止まった。


「それと、コレ渡したかったの」


「?」


サトシさんがデニムのポケットから何かを取り出す。


「はい」


「?」


手の平にのせられたのは、直系5cmくらいのターコイズブルー色した小さな縮緬の巾着袋。


「みんなの前で渡すと、俺のも作れとか言われそうだったから。
………コレ、いちお、お守りのつもり。
じゅけん、の」


「………!!」


予期せぬプレゼントに言葉を失い、サトシさんと巾着袋を何度も視線で往復する。

カサッ………

中指が触れて、音が鳴る。


「?」


臙脂色の紐を解いて開け、中味を取り出す。
中から出てきたのは、小さな女の子のフィギュア。

秋桜柄のワンピースを着た女の子が、かすみ草を抱えて笑っている。
目鼻立ちが強調されたコミカルなテイストで作られたフィギュアを見て、目に熱いものがこみあげる。


「これ………」


「うん。高橋ちゃん」


手のひらの中に「私」がいた。
ハツラツとして………幸せそうに笑っている「私」。


「じゅけん、うまくいきますように」


ふふふ、と笑ってサトシさんが私を見ているけれど、涙で目が霞んでいっちゃって、笑顔が見えなくなる。

瞬きをするたびに、ぱたぱたと涙が落ちちゃって、うまく笑い返すこともできない私の顔は、たぶん大事故になっている。


「どうしよ………すごく、」


「嬉しい」が掠れちゃって、自分が鼻をすする音だけがズビズビと虚しく響く。


「ありがとうございます。
サトシさん、すご過ぎ………も、天才。
こんな素敵なもの作れちゃうって………
嬉しー!うわっ、どうしよう」


嬉しいのと、すごいって感動したのと、感謝の気持ちと、驚きが怒涛のごとく押し寄せて。
支離滅裂な言葉をごちゃごちゃと語ってしまう。

そんな私の隣で「うん、うん」てゆっくり頷いてくれているサトシさん。

私って、なんて幸せ者なんだろう………

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作者名:えりんこ
作成日時:2014年9月16日 16時

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