42.8 ページ15
「………たとえば?」
「たとえば?
………世界平和、とか、人類博愛とか、地球環境保護とか」
クスクス笑いながら二宮くんが言う。
「二宮くんのお願い、すごいグローバルだね。………いくら払ったの?」
「ん?100円」
「100円で叶えてくれるかな?」
「さぁ………俺らの日ごろの行い次第じゃない?」
「そうだね………本当にそう、だよね」
「もし叶ったら、成功報酬、支払いに来よっかな」
神様に成功報酬、って。
ずいぶんな言い方だな、と思うけど。
二宮くんの想いはすごく伝わる。
「うん。その時は、付き合うよ」
元気よく言ったら、満足気に頷く二宮くんの笑顔があった。
おみくじ組と分かれて、焼きそば屋台前で落ち合うって言っていたから、私と二宮くんは絵馬を書きに向かう。
本殿横に設けられた販売所。
並べられた、羊の絵馬を無造作に2枚取って、巫女さんに千円札を出す二宮くん。
慌て500円出そうとすると、黄色い御守りを目の前に差し出される。
「絵馬分はいーから、俺にコレ買って?」
私の目の前で、摘まみあげられたまま揺れる、黄色い合格祈願の御守り。
「あ………うん」
思わず受け取って、支払いをしてしまう私。
「高橋さんのはねー………」
口を結んで、箱に詰められた御守りを見渡す二宮くん。
「あ、この色とかぴったり」
「ちょ、チョコレート色?」
「いや………茶色」
「ちゃ………私のも黄色でお願いします」
「え?黄色?」
似合わなーい、とか思われてるよね。
「んじゃ、いーよ。黄色、ね」
「え?あっ………」
新たに黄色の御守りを手にした二宮くんがさらに千円出して御守りを購入している。
「あの、そしたら私の絵馬代………」
「それ。御守り、ちょーだい」
「え?あ、うん」
紙袋に入れられた御守りを渡す。
「はい、じゃ、コレ」
新たに購入した御守りと絵馬が渡される。
「なんか、同じ色で、交換の意味ねーけど。まーいいか」
1人で納得した二宮くんが、私のあげた紙袋を持ち上げて、指でデコピンのように弾いた。
「絵馬ってどこで書けんだろ………あ、あった特設会場」
笑いながら、長机の並べられたテントへ移動する二宮くん。
私は、呆然としたまま、二宮くんから渡された御守りと絵馬を握り締める。
それから、慌て二宮くんの後を追う。
163人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんこ
作成日時:2014年9月16日 16時