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お財布から100円玉を取り出して、ふと思う。
………お詣りってどうやんだっけ？
正式なやり方を忘れて、前の参拝客のやり方を凝視する。
なんか、みんな違う？
一回拍手したり、途中で鈴鳴らしたり、二回お辞儀したり………どれが正式だ？
キョロキョロとし出した私の様子で、察したらしい松本さんがフォローしてくれる。
「ニ礼ニ拍手一礼、が正解、かな？
先に賽銭入れて、鈴鳴らしてからね」
「あ、ありがとうございますっ！」
………私の様子を見て全て察してくれるなんて機転が利く人なんだろう、と感動する。
思わず、尊敬の眼差しで見続けていたら、私のオーバーリアクションに苦笑して松本さんが言う。
「あと、願い事は、できるだけ詳細に渡って説明するといいんだって」
詳細に………
じゃ、大学名と学部でしょ。
あ、前期日程で合格したいってことも補足しておいた方がいいかも。
じゃ、試験日も………
松本さんからのアドバイスを受けて、いざ、祈願に臨む。
姿勢を正し、お賽銭を払って鈴を鳴らす。
二拝して二回手を叩き、もう一度頭を下げる。
ーーー高橋Aと申します。
私の願いは………
そこで、ハタと行き止まる。
私が本当に願いたいことって、受験合格でいいのかな。
なんか、ここで合格祈願を願っちゃうのはもったいない気がする。
………私が願いたいこと。
私の願いは
『今、私の隣に並ぶ5人組の男の子たちが、ずっと仲良く、幸せに暮らしていけますように』です。
よろしくお願いします。
ギュ、と眼を閉じて力強く想う。
ーーーこの願い、届きますように。
自分のことは、なんとか自分でやっていきますから………
階段を降りて、列からはける。
隣を歩く二宮くんが、ふふ、と笑いながら私を見た。
「ずいぶん、真剣にお願いしてたじゃない。
何、お願いしたの？」
二宮くんからの質問に笑いながら答える。
「私の力ではどうにもならなそうな事、かな」
「ふはは、成る程ね」
「………二宮くんは？
何、お願いしたの？」
「俺も同じようなもんかな。
俺くらいになると、そういうことしか願わないレベルになんの」
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作者名：えりんこ
作成日時：2014年9月16日 16時
