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12.4(sideS) ページ16

「習っていたの?」とか、
「得意科目だった?」とか、
サトシくんに訊いても
サトシくんからマトモな返事はもらえなかった。

そう。
サトシくんは、自分の過去に関する一切のことを他言しない。

ただ、現在、があるだけ。

サトシくんのことは、そこだけ線引きされたかのように八方塞がりだった。

辛うじて。
サトシくんの名前が「大野智」であることだけは、松本くんの話しで分かったけれど。

でも、11年分遡って(さかのぼって)事件や事故の新聞記事を探しても「大野智」が該当しそうなものは見当たらなかった。



…和は、すっかりこの場所と空間がお気に召したようで、
松本くんを「J」呼ばわりしたり、
サトシくんを「おじさん」とか「リーダー」とか、からかい混じりに呼んだりする。

草や木や花の、リーダー。
俺たちを収集させる、リーダー。

「何だよ、それ」

とフニャフニャ笑っているけれど、サトシくんもすっかり馴れたようだった。

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作者名:えりんこ
作成日時:2014年6月10日 22時

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