1.7(sideN) ページ7
『和、学校は?』
『調子出ないから早退したとこです。電車乗るとこだったけど、つけてみるね』
またすぐに付く既読。
でも、そこから返信がこない。
生真面目な翔さんのことだ。
俺を学校に戻す説得をすべきか、
おとなしく帰るよう伝えるか、
考えているんだろう。
スマホを睨みつけながら、思案する翔さんが浮かび、また口元が弛む。
視線をスマホからあげると、伯父さんが財布から紙幣を出し、テーブルに置いて席を立つところだった。
イケメンが浮かぬ顔のまま、伯父さんを見上げ、
会釈した。
俺は腰をかがめたまま、死角へ行き、伯父さんが店から離れるのをやり過ごした。
しばらくして、イケメン少年も立ち上がり店を出た。
それから、本屋へ行き、3冊程購入すると、地下鉄へ向かった。
もちろん、俺は彼と一定の距離を保ちつつ、同じ列車の隣車両に乗り込んだ。
偶然と言うべきか。
俺の家に向かう路線の、家より2駅手前の駅で彼は降りた。
そこから、徒歩で7分程行ったとこ。
有名人のお宅訪問に出てきてもおかしくないような、立派な門構えの、現代風な邸宅に辿り着くと、彼は門の中へと消えていった。
『表札は「松本」ってある。翔さん、聞き覚えある?』
LINEを送ると、また、すぐに付く既読の文字。
『松本?いや、知らない。どこ?』
『木町通り』
『わからないな』
『とりあえず、今から帰るね』
サクサクとLINEで会話しながら、帰宅すると、翔さんが待っていた。
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作者名:えりんこ
作成日時:2014年5月29日 12時