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1.3(sideS) ページ3

「大丈夫ですよ。うちの親、翔さんに甘いですし。翔さん、口回りそうだし」


「家の問題じゃ済まないよ。会社の権利や利益を損なう可能性もあるし、何より信用…」


「だから、期待していますよ、翔さん。そのために、巻きこんだんですから」

PCに向きなおった角度からは、和の表情は見えなかった。が、俺にはわかる。
今、口元に笑いを浮かべながらも、涼しい目をした和がいる。
椅子に腰かけた和の後ろから、先が矢印のように尖った黒い尻尾が見えるようだった。

「……はぁぁ〜 はぁぁ〜」

思わず長いため息が二度、出る。

「コレでいいのかな〜?」

情けない声しか出ない俺を、和が横見する。


「今更、降りられますか?」

「…ムリだろ」

甘いという和の親より、さらに、俺自身が和に甘いと思う。
今回のことだって。
ちょっとしたイタズラ心から膨らんだ大それた計画を、何度も、何度もやめるように説得を試みた。

けれども。

「ん?」と首を傾げながら上目遣いで見てくる仔犬のような仕草一つで、俺が連ねようとしていた反対弁論も、俺の決心も奪っていってしまう。

1.4(sideN)→←1.2(sideS)



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作者名:えりんこ
作成日時:2014年5月29日 12時

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