GRAY 2

頭の瞬発力 ページ28

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「あの、線路に降りたのは俺だけです。
他の4人は、その俺を助けてくれただけで
関係ないです」



智くんにしては珍しく大きな声で、
ハッキリきっぱりと言う。



「君だけが降りたことは、こちらでももう確認済みだから。
関係があるかないかどうかは、こちらで判断させてもらう。
………例えばこの件で、人命救助として表彰したいと言った場合も、君はそう言うかな？」


「………」


智くんを試すかのように、
警官がそう言って反応を見てくる。
随分と横柄な態度に感じられ
口を挟まずにはいられなくなる


「あの、」
「表彰なんてしないでしょ？」


「「え？」」


訊いてきた警官だけじゃなく
俺まで訊き返してしまう。


敬語も外して堂々と立ち回る智くんの
歳上のカオ。


「大ゲサにされたら、
これからの生活、困るんですけど……」


途端に不安定な日本語の羅列になる智くんの言葉


でも、
揺るぎない意思の強さみたいなものを感じさせる
真っ直ぐな言葉。
困るのは俺たちじゃない。


智くんが敢えて除いた言葉の主語は『ケイト君』


大事になればなるほど噂が立つ
そうじゃなくても、
人の好奇心に晒された経緯がある彼に
その仕打ちは酷過ぎる。


ふぅ、とこれ見よがしに大きな溜息を吐いて
警官が俺たちを見回す。


「どうやら、本当に
イタズラでもただの転落事故でもないみたいだね？」


……カマかけたのか。


不信感露わにする松潤
たぶん、俺も同じ表情をしている


「警部」


若い警官が窘めるようにその警官を呼ぶ。
警部と呼ばれたその人は、
悪びれる様子もなく若い警官を見返して笑った。


「ここでの話しはおしまいだ。
移動しよう。
話しは向こうで聞くから」


警部にそう言われて頷く


「車、2台に分かれるんですよね」


若い警官の方に確認する


「3人ずつ2台で」


「相葉ちゃんとニノ、ケイト君と乗って？
松潤と翔くんと俺でもう1台に乗ろう」


智くんがそう言って俺たちを見る。


いつもは、
俺や松潤の仕切りに任せて付いてくるって立ち位置でいるのに。
いざとなった局面での
智くんの瞬発力はすごい。


ケイト君を優先に
1番親しい相葉くんを組ませて相葉くんがいるならと、ニノを付けたんだろう。


智くんの意図を瞬時に汲み取った俺たちは、
互いに頷いた。


「ケイト、平気？」


相葉くんが寄り添うようにケイト君の手を取り
覚悟新たに救護室を出た。



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