夢小説の矛盾にツッコミを入れてみよう

台本=単なる状況説明？ ページ23

台本や戯曲に書かれている情報は、
・登場人物のセリフ
・必要最低限の動き
・演出への指示

だいたいこんな感じでしょうか。言い換えれば、

・音声情報
・場面の大ざっぱな説明

が優先的に表示されています。逆に省かれているのは、

・登場人物の容姿
・心理描写(モノローグ調のセリフを除く)

この二つです。
漫画を小説にしようとしたときに、吹き出しの中のセリフや効果音だけを抜き出して、
そのシーンで何が起きたのかを軽く説明すれば、とりあえず台本書きにできます。

台本が「これだけの表記で十分」とされるのには、きちんとした訳があります。

まず、台本とは、簡単に言えば舞台の原作です。
そこに役者の演技、劇団による演出や道具、セットなどの肉付けが施されて、
初めて舞台として完成します。
人に見てもらうのは、その完成した「舞台」の部分ですね。
つまり、台本はただの骨組みにしかすぎません。イラストで言う、下書きの状態と言えます。
そして、台本にない空白の部分をどう埋めるかを、演じる人々の感性に委ねるため、台本はあまり細かい指定をしません。

さて、これを小説でやってしまうと、どうなるでしょう。

「小説」と言うには、正直、台本書きではまだ未完成です。
ファミレスに行って料理を頼んだら、注文が原材料の状態で
テーブルに運ばれてきたようなものです。

その原材料、もっとおいしく調理できませんか？
その台本、もっと素敵なお話に昇華できませんか？

舞台の台本であれば、公演を行う演技者たちがおいしく調理してくれましたが、
小説でこれをやってしまうと、調理は全て、読者に丸投げされる形になります。
確かに、小説で話を物語るには、読者が細部を想像で埋めることは必須です。
しかし、台本書きだと、その読者への負担が、半端無く増えます。

台本に示されている情報は最低限ですから、
その場面ごとに何が起こっているのか、登場人物はどういう気持ちなのか、
読み手は書き手の考えを推理しつつ話を進めていくことになります。
説明が漠然としているので、読者の推測した場面と作者の伝えたい場面が食い違ったりもしますし、
内心より見かけの情報が強く伝わりますから、
登場人物の心情を楽しみたい読者には、あまり合いません。

台本書きがあまり喜ばれない理由とは、「未完成の物語である」からではないでしょうか。

人の内面を書くのに台本方式は不向きですから、
どこか物語が薄っぺらく感じられてしまうのかもしれませんね。

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