続・生命【シリアス】 ページ48
崩れ落ちていく呪霊の身体から母子の姿が露わになる。
母親の方は既に事切れていて、涙が伝っていた跡が頬に残っていた。その細腕には赤子が抱き留められていた。
異形のモノに襲われる恐怖、自分が死ぬかもしれない絶望と戦いながら身を呈して我が子を守ったのだろう。
その赤子は呼吸が浅くなり少しずつ衰弱していくのが分かる。
免疫の低い赤子は呪いへの耐性も弱く、すぐに命を落とすことが多い。
間もなくこの子も母親の後を追うだろう。
「先生……この子は痛みを苦しみを感じたまま死ぬのですか? 呪いに蝕まれたままですか?」
私の問いに先生は、「うん」と短く答えるだけだった。
それを聞いて酷く胸が傷んだ。
こんな小さな命の終わりにさえも鎖のように呪いは縛りつける。
せめて、せめて安らかに、死んだ事さえ知らないように眠って欲しい。
「Aは本当にお人好しだね」
私の考えを察したのか先生は苦笑いしていた。
「私にはこの子に取り憑いた呪いを解く術はありません……でも、痛みを感じることなく眠って欲しい……そう願ってしまうんです」
「そうだね。こんな終わり方は僕も好きじゃない」
先生は母親から赤子を抱き上げると何かを呟いた。
術の一種だろうか。少なくとも、私が読んできた書籍には書かれていないものだった。
彼が詠唱し終えると、赤子にまとわりついていた瘴気が消え代わりに淡い光が包み込んでいく。
「先生、それは?」
「これは体内に残された呪いを祓う術で、死ぬ間際に痛みを感じること無く穏やかに死を迎える事ができる。『命』そのものを救う万能なものではないけど、君が願った事は叶えられる、そんなものさ」
彼は端的に術の原理を教えると赤子を私に渡してきた。
「その子の最期は君が見届けた方が良い。僕の汚れきった腕の中よりずっとマシだ」
「どうして、その様に言うんですか?」
「僕が
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作者名:弓兵 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/archer0/
作成日時:2020年10月14日 23時