続・全てなかったことに【切ない】 ページ16
自分の身体に巻き付いていた紐が解けていくように、するすると言葉が出てくる。
「先生の口から、『ごめんね』と言われるのが怖いんです」
思い浮かんだのは私が先生に好きだと伝える光景だった。
顔を赤くし噛みながらも自分の想いを伝えた私に彼は困ったように笑うと、「ごめんね」とやんわりと断った。
現実に起こったわけでもないのに私の心に深い爪痕を残した出来事/夢。
恋は必ず叶う。
そんな、少女漫画みたいな展開に憧れていた。
現実はそう上手くいかない。たしかに恋は叶う。
しかしどれだけ愛していたとしても終わりは突然やってくる。
永遠の愛を貫くことがどれだけ困難なものか。
そんな事象に私は絶望していた。
私には先生への愛を貫く自信がある。
でも先生の方は?
先生が見限って別れを告げたら?
考えたくもないような事ばかりが堂々巡りし、いつしか私の心は病んでしまった。
この苦しみから解放されたい。
平穏な日々を過ごしたい。
幸せな日々を送りたい。
「だから、忘れることにしたんです。『初めから想いなんて抱いてなかった』って言い聞かせて、思い出しそうになったら別の言葉で押し殺してたんです」
正直に言うと、この期間が辛かった。
自分の気持ちに蓋をして雁字搦めに縛り上げて奥底にしまい込む作業に精神がおかしくなりそうだった。
自分が自分でなくなるような気さえもした。
でも、それでもいいと思った。
自分の中だけで終われるなら言葉に出さなくても別段構わなかった。
「やっと……やっと諦めきれると思ったのにっ……!」
今になって思い出した。
先生が私を見つめる目にはどこか憂いを帯びていた。
それが気になって仕方がなかった。
もしかしたらと思ってしまった事が何回もあった。
だから完全に忘却できなかったのだろう。
あぁ、そうだ。
どれだけ縛っても言葉で制したとしても抑えきれないほど、私は_____。
「先生の事が、好きなんです」
ずっと言いたかった言葉が、伝えられずに積もり積もった想いが自然と出てきた。
その瞬間、私の身体が包まれた感触があった。
終・全てなかったことに【得恋】※後半:五条視点→←続・全てなかったことに【切ない】
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作者名:弓兵 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/archer0/
作成日時:2020年10月14日 23時