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一瞬浮かんだ由美の顔を消すように、ふと顔を逸らす。
申し訳ない気持ちがない訳じゃない。
でもやっぱり、これくらいならいいんじゃないかって。
由美だって二宮先輩と仲良くしてるんだから、これくらいのお願い引き受けたってバチは当たらないんじゃないかって。
そんな気持ちで引き受けた。
智「辛い?」
A「え?」
智「モデルやるの、」
あたしの顔をのぞき込んでくるその瞳は、少し不安そう。
…てゆーか、やっぱり知ってるんだ、大野先輩は、由美の気持ち…
A「…大野先輩は、いるんですか?」
智「ん?」
A「好きな人、」
Aに、好きな人がいるか、と聞かれた。
思いがけない質問。
体育座りで横にいる俺をのぞき込む姿に、どきどきせずにはいられない。
でも冷静に。
Aはニノが好きなんだ。
…けど…、
智「…いるよ、好きな人」
A「え、そうなんですか?」
驚いた様子で顔を上げる。
そんな姿も、かわいい…
A「…由美…ですか…?」
智「…」
その質問に俺が今ノーと答えたらどうなる?
Aはまた、由美ちゃんと気まずくならない?
じっとAを見つめると、軽く頭を下げて口を開いた。
A「…、ごめんなさい、」
智「え?」
A「踏み込んだこと聞いてしまって…」
…そんなことない。
俺が好きなのはAだから、
本当は言ってしまえたらいいのにって思ってる。
でも、今は自分の気持ちにただ正直になるより、 Aに辛い思いさせたくない。
智「…大切にしたいんだよね」
A「…」
智「その人のこと」
…今はそれしか言えねぇよ。
きっとなに言っても君は気付かないよね。
友達の好きな人が自分のこと好きなんて、
きっと一番そういうことに、鈍感な気がするから…
*
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作者名:うさこ | 作成日時:2015年12月15日 19時