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A「…、戻りましょ」
お店に戻ろうと一歩足を踏み出すと、手首をぎゅっと掴まれた。
驚いてそちらを向くと、微笑む大野先輩。
…なんで、
なんでそんな顔であたしを見るの…
智「その顔じゃ俺が泣かせたみたいじゃん(笑)」
A「…、」
智「かわいい顔が台無し」
大野先輩の優しさに、あたしは再び腰を下ろした。
大野先輩がAと一緒に出て行った。
由美「…、」
和「どした?」
由美「いえ…」
…どうしよう、泣きそうだ、
大野先輩は自分からあまり人に関わるタイプではない。
見てれば分かる。
自分の興味のあるもの以外、気にしないタイプだ。
…本当に好きなのかもしれない、Aのこと…
和「あ、これ」
突然目の前に出されたのは小さなぬいぐるみ。
和「さっきゲーセンで取った」
由美「…なんで私に…」
和「せっかくだから、お土産」
二宮先輩はにこっと笑って小首を傾げた。
…なんでこんな風に笑えるんだろ、
由美「…たまに、アイドルみたいな笑い方しますね、」
和「まじで(笑)?」
由美「どこで覚えるんですか、そういうの」
和「…うーん…、 由美の前だからかな」
…私の前だから?
なに、その意味の分からない答えは。
由美「…ふっ、」
和「笑うなよ(笑)」
由美「だって可笑しいんですもん(笑)」
さっき泣きそうだったのに、なぜか笑みがこぼれた。
手の中にいるこの丸いぬいぐるみは、ウサギだろうか?犬だろうか?
よく分からないこの柔らかな感触が、私に少し落ち着きを与えてくれる。
和「由美が笑ってくれんなら、それでいいよ」
…まただ…、
由美「…アイドルにでもなったらどうですか?」
和「あ、ニノちゃんかわいいし(笑)?」
由美「……」
二宮先輩はやっぱり不思議な人だ。
話を逸らしてくれるから、心が軽くなる。
…少し、大野先輩とAのことを忘れることが出来た…
*
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作者名:うさこ | 作成日時:2015年12月15日 19時