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智「大丈夫?」
大野先輩は隣の閉まっているお店の前にあるベンチに腰掛けた。
“座れば?”って促してくれたから、ゆっくりとそこに座った。
A「、すいません、まだラーメン残ってたのに…」
“のびてるのも好きだからいいよ”って、
…この人は本当に優しい。
すべてを包み込んでくれる、そんな優しさ。
智「…今日、楽しかった?」
A「え…」
智「ゲーセンとボーリング、行ったんでしょ?」
A「……楽しかった…です」
…そうだよ。
楽しかった。
すっごく楽しかった。
…なのになんでこうなっちゃうんだろう…
二宮先輩は、やっぱり由美のことが好きなのかもしれない。
由美に向けてる笑顔は、あたしの時とはどこか違う気がする。
同じかもしれないけど、違うとしか思えない…
智「あ、これ、」
A「…なんですか…?」
智「お土産」
A「…え?」
智「しおり」
手渡されたのは細長いちいさい白い紙の袋。
智「本とか読む?」
A「…マンガなら」
智「じゃ、そこに挟んどいて」
…なんでくれたんだろ…
智「その人の絵、見てきたの」
袋の中からそれを取り出してみると、虎の絵。
小さくてよく分からないけど、大野先輩ってこういう絵が好きなんだ。
智「…ショックだった?」
A「え…」
智「ニノが由美ちゃんのこと構うから」
しおりを持つ手に力が入る。
…なんでそんなこと言うんだ、この人は…
そんなこと言わないで、
あたし今、すごく我慢してるの、
もらったしおりに神経集中させて、頑張ってるの、
今二宮先輩のことで頭をいっぱいにしてしまったら、あたしは泣くしかないんだよ…
智「…泣いてもいいよ」
A「…、」
智「泣きたいんじゃないの?」
さらにきつく拳を握りしめた。
しおりはきっと、少し曲がってしまった。
…大野先輩は優しすぎる。
そんな言葉掛けられたら、泣くしかない…
下を向くと涙が溢れてきそうで、どうにかその場で立ち上がる。
*
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作者名:うさこ | 作成日時:2015年12月15日 19時