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担任の頼まれ事を終え、休み時間も残り10分。
思っていたより時間がかかってしまった。
由美「あー、どうしよう、もう時間ないよー…」
結局頼まれたプリントを運んで、教室から急いで美術準備室に向かってる。
…でも恥ずかしさが大半を占めている今は、時間短くてよかったって思う。
大野先輩と普通に話すことも難しそうだし…
パタパタと廊下を走って階段を登る。
…はぁ、走ると疲れる、
体力ない…、
しばらくしてようやくドアの前までたどり着き、ドアに手をかけようとすると、部屋の中から笑い声が聞こえた。
「きゃはははっ、ほんとですか(笑)!?」
「ほんとだよ(笑)」
……、
手が止まってしまった。
ドアを引けばすぐに大野先輩に会えるのに、簡単にそれが出来なかった。
…だめ、もやもやする。
大野先輩の楽しそうな声に、足がすくんでしまう。
私とふたりの時は聴いたことのないような笑い声。
…に聞こえる。
…苦しい、どうしよう、入りたくない…
A「…由美?」
磨り硝子越しに二つの影が見える。
…どう考えても、このまま帰るのは無理だよね…
…あー、開けたくない…
息を整えてゆっくりとドアを開けると、笑顔のAと目が合った。
A「遅かったじゃん」
やっぱり手伝えばよかったね、って言うAの向こう側に、こちらをのぞき込む大野先輩。
…だめ、笑えない、
どうしよう、笑わなきゃ…
智「お疲れ様」
ふにゃっと笑ってくれる大野先輩に、泣きそうになった。
Aに笑いかけないでほしい、なんて私のわがまま。
Aだけじゃない。
他の人に笑いかけるところなんて、見たくない。
…好きすぎる、
なんでこんなに好きなんだろう、
…大野先輩がもし誰かを好きになってしまったら、私はどうなるの、
もうここに来れなくなって、大野先輩と話すことすらなくなって…
…やだ、そんなの絶対やだ…、
智「由美ちゃん、」
由美「…、え?」
智「美術館、行こっか」
由美「…え?」
泣きそうになりながらふとAの方を見ると、ニコニコしながら“デエト”って口パクしてくれる。
*
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作者名:うさこ | 作成日時:2015年12月15日 19時